福祉の制度への不信感

55歳の女性は、20代の頃に実家から出奔して、寮完備の仕事に就いた。低家賃で住めるうえ、家電なども設備されているため、身軽に動けることをメリットと感じていた。

「保証人がいないので賃貸は無理」と考えていたため、転職の際の最優先条件は「寮があること」だった。手取りは多いときで20万円弱、低家賃なので貯蓄もできた。

数年前、貧血やだるさの症状が続き受診したところ、悪性腫瘍が見つかった。軽い手術だろうと、休暇をとって入院した。

予後が芳しくなく、職場に事情を申し出て、退職を願い出たとたんに、社員寮からの退去を求められた。次の住まいを探そうと不動産会社へ出向いたが、失業し体調不良とあって、よい物件には巡り合えなかった。

行政にも相談に行ったが、余貯蓄があるから生活保護の受給は難しいと言われただけで、住宅は紹介してもらえなかった。

ここからどれだけ医療費がかかるか先行きが不透明な中で、貯蓄が尽きれば「支援できる」と言われたことに、不信感が募った。

「福祉の制度って、低所得の人しか対応しないんですね。住宅を失うということに対しては制度がないって言われて。自分でなんとかしてくださいって」と振り返る。

誰しもが福祉制度を使えるわけではない(写真/shutterstock)
誰しもが福祉制度を使えるわけではない(写真/shutterstock)
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単身高齢者のリアル ――老後ひとりの住宅問題
葛西 リサ
単身高齢者のリアル ――老後ひとりの住宅問題
2026/4/9
1,012円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4480077394

こんなに難しい「最期の居場所」
老後ひとりになって初めて気づく、あまりにも冷酷な現実

貯蓄があっても賃貸に入居できない? 持ち家でも安泰とは言えない? 8日以上発見されない「孤立死」は年間2万件超。老後ひとりの「最期の居場所」をみつけるのは、こんなにも難しい。一人でも孤立せず生活を続けるためには、どうすればよいのか。不動産業界や民間団体によるさまざまな取り組みを紹介するとともに、日本の市場化された住宅システムの問題点を徹底検証。ライフコースや家族のかたちが多様化し、孤独死予備軍が急増する今、単身高齢者の住まいを保障する社会の仕組みを考える。

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【目次】
はじめに

第一章 孤独死の現場から

第二章 どこで最期を迎えるか――高齢者の住宅問題

第三章 単身化する日本――住宅難民予備軍の実態

第四章 不動産会社による居住支援――「隙間のケア」をどうするか

第五章 家で安心して最期を迎えるために必要なこと

おわりに

参考文献
あとがき
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