我那覇が自ら文書を作成した声明文
Jリーグは仲裁を受けなかった。職を辞した後藤の覚悟は空転した。
後藤の仲裁申し立て受諾をJリーグに望む我那覇の声が各紙に載ったのは、1日が経過した14日であった。最も大きなスペースを割いたのは日刊スポーツ。
「我那覇がドーピング問題の仲裁不成立に涙で訴え」
1810字の記事の中では、
「川崎Fは事前に本人の意思を確認し、処分を受け入れて、事態を収束させる方向でまとまっていた。だが、我那覇は『納得できないでモヤモヤしていた。この場で言わないと、一生後悔すると思ったので発言しました』とコメント。
12日午前に、チーム側に意思を伝え、マネジメント事務所関係者を交えてクラブハウスで会談していた。川崎Fは7日に、仲裁申し立てをしない理由を公表。
申し立てた場合、国際サッカー連盟(FIFA)、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)から我那覇に独自の追加処分(出場停止1~2年)が下される可能性があるとし、我那覇のために、リスクを避けると説明してきた。
しかし、我那覇は『僕はそれ(出場停止)を覚悟してやっていきたいと思う。チームと対立はしたくない。チームが意見を聞いてバックアップしてほしい。もう一度、仲裁の場があればいいし、白黒はっきりさせたい』と続けた。話しているうちに涙を流し、声を詰まらせながら、自分の考えを絞り出した」
同日、我那覇は自ら文書を作成し、関係者に配布した。自分の言葉を自分で記した朴訥な文面であった。
関係者の皆様
さる5月8日、自分に下された裁定や処分の内容はよく理解しています。これまで何度も、納得しよう、忘れようと努力してきました。一方で、色んな報道や、今回の仲裁申し立てを見て、自分がドーピング違反を犯したとは、どうしても思えなくなりました。
ギリギリまで悩みましたが、自分は違反をしていないんじゃないかという気持ちを持っていた事や、たとえ自分により大きな処分が下るリスクが有っても、今回の仲裁の場を通じて、本当に自分がドーピング違反を犯したのかどうかが明らかになって欲しい気持ちを持っていたことを、今言わないと一生後悔すると思い話しました。
家族にもサポーターにも胸を張って生きていけるよう、この機会に意思を伝えようと思いました。自分の本当の気持ちを確かめるのに時間を要し、Jリーグ及び関係者の皆様をお騒がせしてすみませんでした。
今後どうするかは、具体的には決めていませんが、クラブと充分話し合って行きたいと思います。もし、今回の仲裁のような機会が訪れるなら、是非真実が明らかになって欲しいと思っています。チームが自分の事を考えて下さっていることも有り難く思っています。
これまで通り、Jリーガーとしてフロンターレの一員として、チームのために頑張っていきたいと思っています。
2007/11/14 川崎フロンターレ 我那覇和樹
ブログなどでサポーターに向けて近況を報告するのとは全く異なり、声明文というべき性格のものを書き上げることには慣れていない。漢字の開きが少ないことからもパソコンに慣れていないことがうかがえる。
しかし、借り物の言葉ではない本音の覚悟がそこには渗み出ていた。問題が飛び火することを考え、あえて他の選手の医療のためにも、とは一行も書かなかった。
文/木村元彦
争うは本意ならねど(集英社公式サイトhttps://books.shueisha.co.jp/cbs/c2082/c290-26384/にて26年5月6日まで無料公開中)













