てのひらで転がされるのは、働く営業マンも同じ

「10周年キャンペーン」「11月だけのキャンペーン」……いろいろな打ち出し方があるかもしれないが、実際には10周年を過ぎたら11周年、11月を過ぎたら12月と、その多くが永遠に終わる気配のない期間限定キャンペーンなのである。

こうなると、ひと昔前によく見た、いつまでも閉店しない「閉店セール」「閉店商法」と似たようなものであり、常設キャンペーンと呼ぶに等しいともいえる。

事実、住宅メーカーも戦略的にこのキャンペーンというものを毎月の会議で考案している。

毎月月初になると、本社からは、「えー、今月のキャンペーンは○○と△△なので、各営業社員はお客さまの背押しとして、必ず月内契約に取り込むように」とのお達しが来る。

写真はイメージです(写真/PhotoAC)
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ただ、ここで現場が混乱するのは、前月期間限定のキャンペーンを餌に契約したお客さまが、今月も打ち合わせで来場するということである。

キャンペーンというものは会社が大々的に宣伝しているものでもあるため、キャンペーンの中身が書かれたチラシは住宅メーカーの入り口から商談席のガラス面まで誰でも目につくところにベタベタと貼られている。

そして先月契約したお客さまは、それを見て「なんなの、これっ⁉ 先月だけじゃないじゃない! むしろ先月よりグレードアップしている!」なんて大騒ぎされることになるわけだ。

そんなとき、担当営業マンも、「いやっ、私たちも何も知らされていなかったもので……」としかいいようがない。

しかし、これも事実。キャンペーンが継続することはわかっていても、その内容は直前まで知らされることはないからである。

おそらく本社としては事前に営業マンに告知してしまうと、なかにはその内容を見て契約時期を操作してしまう者も出てきてしまうことを懸念しているからだろう。

つまり会社のてのひらで転がされるのは、お客さまだけでなく、そこで働く営業マンも同じなのだ。

なぜ、ときとして大きな値引きをしてもらえることがあるのか?

そしてキャンペーン同様、契約の背押しとして使われる「値引き」についてお話ししよう。

住宅メーカーには目安として「坪単価」というものはあるが、とくに注文住宅になると定価というものは存在しない。

注文住宅になると土地の条件によっても付帯工事(本体工事費以外に必要な電気、ガス、給排水工事、地盤改良工事等)にかかる金額も異なるし、建物の仕様によっても大きく変わってくるもの。

そういう意味で、「標準価格」などあってないようなものでもある。

写真はイメージです(写真/PhotoAC)
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では定価が存在しないものに、なぜ、ときとして大きな値引きをしてもらえることがあるのか? 

もちろん住宅メーカー側は赤字にならないよう、利益を計算したうえで値引き幅というものを決めているのはいうまでもないが、その値引きが、果たしてお客さまから見て適正なものなのかどうかということである。

もちろん毎回、すべてのお客さまに「企業努力」として限界ギリギリの値引きをしているとは考えにくい。

お客さまとしても定価のない住宅価格、「最初から値引き前提で上乗せした金額を提示してたんじゃないか?」などと疑いを持ってしまうこともあるだろう。

ただ仮に大きく値引きしてくれたとしても、なぜその値引き額になるのか、原価や利益率にもとづいた計算を住宅メーカー側が明確にお客さまに説明する場面など、まず見たことがない。

たいがいは説明なしに値引きされ、お客さまが喜んで終わりである。値引き金額なんてものは住宅営業マンがお客さまの顔色を見ながら決めることも多いため、すべてのお客さまに均一化されたものではないだろう。

そういう意味では、値引きなどというものはサービス品がつくキャンペーンより不明瞭で公平性に欠けるといわざるをえない。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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ちなみに住宅メーカーすべてが必ず「値引き」というものに対応してくれるものではない。

ローコスト住宅メーカーは基本、粗利益ギリギリの価格設定のところも多いので、ローコスト住宅メーカーで数百万円の値引きをお願いしても実現しにくいと考えたほうがいいだろう。

大きな値引きに対応してくれる可能性があるのは、やはりもともと高額な坪単価の大手住宅メーカーである。

私自身は、この業界に入る前に住宅を購入したわけだが、大手住宅メーカーで契約直前の最終見積もりを提示されたとき、こちらは頼んでもいないのに営業担当者からはドヤ顔で「300万円」の値引き。

こちらはキョトンとしたまま、終始、頭のなかは「?マーク」。そもそも依頼した値引きでもなかったため、ありがたみより正直、「ここの価格設定は、いったいどうなってるんだ?」という印象しか正直、残らなかった記憶がある。

このように、お客さまのニーズが把握できない間の悪い営業マンというのは、どんなに大きな値引きをしたところで、お客さまから感謝されない典型例。値引きもキャンペーンも、すべては営業マンの見せ方次第なのである。

文/屋敷康蔵

『住宅業界ぶっちゃけ話 元営業マンが暴露する儲けのカラクリ』(清談社Puclico)
屋敷 康蔵
『住宅業界ぶっちゃけ話 元営業マンが暴露する儲けのカラクリ』(清談社Puclico)
2026/4/24
1,760円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4868500032

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