スパイ防止法、旧姓使用法制化、そして憲法改正
予算委員会は、単に予算を精査する場ではない。
総理以下、全閣僚が出席し、NHKのテレビ中継が入る中、外交・安全保障から物価高対策、エネルギー政策、さらには政権のスキャンダルまでが俎上に載せられる「国政のショーケース」だ。
自民党内からも「熟議を欠いた予算成立は、後に国民の不信を招く」との懸念が出ており、高市総理が掲げる「年度内成立」は、事実上の不可能を強いる「無理筋」な指示とも言える。
それでもなお、高市氏がこの不可能に挑戦しようとする背景には、選挙で得た強力な民意というバックボーンを背景に、自身の「こだわり」である保守本流の政策を一気に推し進めたいという執念がある。
「総理は『公約に掲げたことは、すべて実現したい』と公言しています」と、周辺は語る。 予算という大きなハードルを早々にクリアできれば、7月15日までの会期中に、いわゆる「高市銘柄」と呼ばれる重要法案に次々と着手できる。
スパイ防止法の制定、旧姓使用の法制化、そして政治家としての究極の目標である「憲法改正」という本丸への突入だ。
高市氏はすでに、そのための布石を冷徹に打ち始めている。圧倒的な勝利を力の源泉に、これまでは少数与党だったため野党側に配分されていた予算委員長や憲法審査会長、法務委員長といった主要なポストを、軒並み野党から「奪還」することに成功したのだ。
巨大化した自民党の足元にも不安要素
仮に審議時間が例年通り確保されたとしても、野党側の陣容は心もとない。
今回の選挙では、官房長官経験者の枝野幸男氏、外務大臣経験者の岡田克也氏、玄葉光一郎氏といった、論戦の重石となるべきベテランが軒並み落選した。危機管理や外交安全保障において、政府の隙を突くような厚みのある質問ができる人材は、野党から急速に失われている。
一方、巨大化した自民党の足元にも不安要素はある。今回、党内には実に66人もの新人が誕生した。これまでの新人教育において「実地研修」の場となってきた派閥は、麻生派を除いてすべて解散しており、若手を指導する仕組みが消失している。
8日夜、高市氏は党幹部に対し「新人教育が最重要課題ですね」と釘を刺した。これを受け、党幹事長室が主導し、比例ブロックごとに政治資金規正法の遵守やSNSでの発信術を指南するというが、現場の危機感は強い。
党のベテラン職員は、頭を抱えながらこう語る。













