“実在”しない「VTuber」を「推す」
二次元の「推し活」はアニメやゲームだけが対象ではない。近年ではYouTuberも「推し」の対象となっている。
そんなYouTuberの「推し活」で注目されるのが「投げ銭」である。ライブ配信中に配信者に金銭を送る機能であり、正式名称は「スーパーチャット(スパチャ)」という。2017年に導入された機能で、まだ歴史は浅いものの、この機能を利用して高額のスパチャを獲得する配信者も多く、YouTuberの収入源のひとつだ。
そんなYouTuberの中でも特異なのが、VTuberと呼ばれる配信者だ。VTuberとは「バーチャルYouTuber」の略である。2Dや3Dのアバターと呼ばれるキャラクターモデルを利用して(多くは簡単なアニメーションも可能)動画配信やライブ配信を行う配信者のことを指す。
アバターを介して動画配信活動をするため、顔出しは行われず、配信者はキャラになりきって配信を行うことが多く、現在、国内のVTuberは6万人以上とも言われている。
VTuber事務所「ホロライブプロダクション」に所属していたVTuber「潤羽るしあ」(現在は活動終了)は、累計スパチャ金額が3億7000万円に達した。
同事務所の所属VTuberでは、「兎田ぺこら」「桐生ココ」(活動終了)「宝鐘マリン」らも3億円を超えており、1億円以上を獲得したVTuberは50人以上にのぼる。人気VTuberのライブ配信を観ていると、投じられたスパチャの金額がチャット欄に次々と表示され、途方もない金額が動いていることがリアルタイムで確認できる。
VTuberは顔出しをしていない。それどころか、少女キャラのアバターを中年男性がボイスチェンジャーを使って演じている可能性すらある。“中の人”の素性はわからないし、握手のような接触があるわけでもない。にもかかわらず、VTuberのオタクたちは多額のスパチャを投じる。視聴者は何を求めて投げ銭をしているのだろうか。
そうした事情を探るために、実際にVTuberへの投げ銭を定期的に行っている男性に話を聞いた。都内の出版社に勤務する【リョウ】(32、仮名)は、月刊連載作品を10本以上も抱えるマンガ編集者だ。多忙な時間を縫って取材に応じてくれた。彼はどのようにして、バーチャルな存在に投げ銭をするようになったのだろうか。
「最初のきっかけはコロナ禍でした。在宅勤務の時間が増えた時、やっぱりYouTubeの視聴時間が長くなっちゃったんですよね。VTuberを観るようになったのは、オススメに流れてきた動画をなんの気なしにクリックしたのがきっかけです。
観てすぐにハマりました。僕がハマったのは男性VTuberで、バラエティ番組のような企画をやるチャンネルでした。あの時代、世間全体が鬱々としていたので、馬鹿騒ぎしている動画はありがたかったんですよ」
YouTubeにスパチャの機能が導入されたのは、前述のとおり2017年。VTuber最大手の事務所である「ホロライブ」と「にじさんじ」は、どちらも2018年から活動を開始しているので、2020年から視聴している【リョウ】は古参ユーザーの部類に入る。職業柄、二次元への理解度は高く、キャラクターがしゃべる動画を観ることに対して抵抗はなかった。
彼が推しているのは「ジョー・力一」という男性VTuberだ。話の内容がおもしろく、それこそ「オールナイトニッポン」(ニッポン放送)や「JUNK」(TBSラジオ)を聞くような、ラジオ感覚で視聴しているという。













