月に331本の指名のうち180本は【ユミ】
金銭感覚が歪んでいるように感じるが、こうした認知は何も【ユミ】に限った話ではない。ホストにハマる女性の多くは、5万円の服は躊躇して購入できないが、ホストクラブには100万円を支払える、と語る。
ホストクラブで散財したあと、終電後のタクシー代がなく徒歩で家路につき、安アパートでカップラーメンをすする。1万円でも2万円でも残しておけばいいのに、と思うのだが、彼女たちはその手のエピソードを「あるある」と笑い飛ばす。
「自分は本当に、他人にしか大金を使えない。自分にお金を使いたいと思えないから、ホストクラブに行ってる時だけ、ちょっと贅沢してる気持ちになれる。
メン地下なんて、タチの悪い運営のところはポイントカード制にしてて、しかもカードの有効期限が1カ月しかなくて、その間に100万円使ったらデート、300万円使ったらユニバ(USJでデート)とかでしょ。でもホストは100万円使えばユニバに行けるし、全部払ってくれる。メン地下はコスパ悪いけど、それに比べればホストはコスパいいですよ」
ホストはコスパがいい──。
それは、彼女だけでなく、多くのホス狂い女性たちが口にするセリフだ。私は他の子よりコスパよく遊んでいる、と。決して【ユミ】だけが特別なのではない。
「推し」のエースではなかったものの、つねにナンバー2やナンバー3の地位にいた【ユミ】は、別の方法で担当に貢献する。
「その頃って、指名本数はあんまり注目されてなかったんです。だから担当を指名本数でトップにしたんです」
指名本数に着目したのは、彼女の「推し活」遍歴によるものだった。
「ホストに行くようになる前はメン地下に行っていて、そこに招待特典ってのがあったんです」
メン地下の招待制度とは、特定の客が、ほかの客の分のチケット代金を支払う制度を意味する。仮にある女性が4人を招待した場合、彼女は自分の分と合わせて5人分の代金を支払う。そのかわりに、彼女は招待人数に応じた特典(握手や撮影など)を得られるのだ。
「メン地下にはこういうシステムがあったよ、という話を担当にしたら、『じゃあ俺が指名を何百本つけたいって言って、特典があったらお前やるの?』と聞かれて、おもしろそうだったから『やる!』って答えたの。
それで私ががんばれるように、担当にはポイントカード作ってもらいました。30人呼んだら『プリ同』(プリクラ同伴=一緒にプリクラを撮りにいくこと)、50人呼んだらいっしょに焼肉、とか」
そうして彼女の担当は、その月には331本もの指名を獲得した。そのうち180本は【ユミ】によるものだった。
「友だちにお金渡してホストクラブに来てもらったり、あらかじめキャッシャーに私のお金を預けておいてそれで飲んでもらったり。それで足が出た分は入金日までに払いましたけど。でも、この当時はホストに指名本数を何本つける、みたいなことは流行っていなかったから、『月間指名本数331本』って新記録を作ったら、すごく話題になりました」
いわば「推し活」メソッドをホスト業界に流用することで、担当に「指名本数トップ」というトピックを作ってあげたわけである。
文/加山竜司 写真/Shutterstock
#3に続く













