「キャッシュバック」が一番幸せ
それにしても、締め日ともなれば、カブり客同士が店で鉢合わせたりはしないのだろうか。
「私はその頃、メン地下にも通っていたんです。ホストクラブの締め日って、メン地下のオールナイトライブの日とだいたいカブるんですよね。そっちのオールナイトライブに行くにはホストクラブを22時半には出ないといけないので、その子とはちょうど入れ違いだったんです。締め日にお金使ってシャンコの準備とかされても、『そういうのいいから。お金だけおいていくから』って断ってました」
「シャンコ」とは「シャンパンコール」の略称で、高額なシャンパンやボトルを注文した客に対し、ホストたちがパフォーマンスで場を盛り上げる演出のことを指す。
金払いがよく、ランキングに貢献し、自分の序列を受け入れて身を引くところは引く。そうしてホストを立て、彼女は「いい客」であり続けた。だが、エースになれるわけではないのに、なぜそこまでの金額を投じる必要があったのだろうか。
単純な疑問として、1回5万円程度の支払いで、楽しく飲むだけではダメなのだろうか。彼女はホスト遊びに、どのような楽しみを見出していたのかが気になる。
「ホストって、使った分だけプレゼントしてくれるんです。あれ、一番いい。2人で5万円ぐらいするような高いご飯に連れてってくれたり、旅行に行っても高い宿に泊めてくれたり。ホストに100万円使えば、10万円の宿が返ってくる。キャッシュバックみたいなもんすね。それが一番幸せな瞬間」
ホストとの店外デートでは、旧来型の「男性がエスコートするデート」が演出されるので、費用はすべてホストが出す。男性がリードして、女性を“姫”扱いする。デート代金は男がオゴるものであり、そうしたジェンダーバイアスに則った疑似恋愛を提供するのが習わしとなっている。ただ、ホストがオゴると言っても、もともとは女性客が支払った金である。
「キャッシュバック」、【ユミ】はそれを「一番幸せ」と言う。
「私、自分にお金を使うのがすごい苦手なんです。服だったりエステだったりに、お金を払いたくない……っていうか、興味ないことに1万、2万ましてや10万円とか払えないですよ」













