「『出稼ぎ』に行ってました」

このため、一部の“ホス狂い”女性は、路上で客を引き、個人間で売春を持ちかける。個人間取引であれば、店側に取り分を差し引かれることなく、同じ労働量で稼ぎを増やせる。ただし、不特定の人を対象とした売春行為および客引き行為は犯罪である。新宿区立大久保公園の周辺での“立ちんぼ”が問題視されているのは、ニュースなどで目にしたことがあるだろう。

「一番がんばっていた時期は、メンエスに週5で出勤してアベ(アベレージ=1日平均)6~8万。月でだいたい100万超えるくらいですね。『女は風俗で稼げる』って言われるかもしれないけど、ちゃんとした額を稼ぐには、1日15時間(店に)待機とかしてるから、そんなに楽ではないと思う」

だが、その金額では足りない。「どうやったらより稼げるかを考えるようになった」という彼女は、どのような方法にたどり着いたのか。

「『出稼ぎ』に行ってました」

彼女が言う「出稼ぎ」とは、所属する風俗店とは別の地域へと、泊まり込みで働きに出かけることを意味する。移動手段や宿泊先は業者が用意し、雑費や寮費を数千円ほど取られるが、仕事に専念できるため「出稼ぎ」を利用する“ホス狂い”は多いという。

TikTokで「#出稼ぎ」と検索すると、その日の稼ぎの報告や、愚痴を漏らす投稿があふれかえっている。ブルボンのチョコレートビスケット菓子「アルフォート」の空き箱にはちょうど1万円札が100枚入ることから、出稼ぎ中のホス狂い界隈では「アルフォート」の空き箱に貯金する「アルフォート貯金」がSNSで流行しているほどだ。

1万円札が100枚入るアルフォートの箱
1万円札が100枚入るアルフォートの箱
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【ユミ】は、静岡や神戸などの地方都市へと出稼ぎに行ったという。

「東京は店も女の子も多くて、需要と供給が合わないんですよ。それに東京でお金を持ってる人って、六本木とかにいるすごい綺麗な高級デリの人を好むんです。でも地方ではあんまり綺麗すぎる子だと、お客さんが『東京の子だー』って気後れしちゃうのか、あんまりウケないんですよね。地方でウケる子はあんまり化粧が派手じゃなくて、若干素朴っぽい子。最初の頃の『AKB48』のコンセプトみたいな。そういう子は地方のほうが稼げる。私もそっちですね」

彼女の金を稼ぐ手段は、出稼ぎだけにとどまらない。

「あとは『Fantia』(動画、写真、イラストなどを投稿できる創作物投稿プラットフォーム。有料会員向けに過激な動画や写真なども投稿される)を使ったり、個撮(カメラマンとモデルが1対1で行う個人撮影会)もやりました。同人AVのアカウントを持っている子は、パパ活の延長で個撮をやってて、普通にハメ撮りしてる子も多いみたいですね。あとは“裏引き”もしましたね」

風俗業界で“裏引き”とは、店で知り合った客と、店を介さずに直接やり取りすることを指す。“直引き”ともいい、店舗型風俗店ではご法度とされる行為だ。

他人から金品を受け取る行為を“引く”(「金を引っ張る」からの転用か)ということもあるが、店に内緒で、裏で取引するから“裏引き”というわけである。しかし、【ユミ】が口にした“裏引き”とは、それとはまた異なるようだ。

「風俗店の在籍は失いたくないから、メンエスのお客さんからはお金を“引き”ませんでした。マッチングアプリで知り合った一般男性から、お金をもらっていたんです」

一般男性からお金をもらう──。随分と、不穏な話だ。

文/加山竜司 写真/Shutterstock

#2に続く

「推し」という病
加山 竜司
「推し」という病
2026/1/16
1,320円(税込)
288ページ
ISBN: 978-4166615193

なぜ彼らは苦しくても「推し」続けるのか
AKB、ホスト、VTuber、アニメキャラ、ゲーム、地下アイドル、AV女優、ビジュアル系バンド…

当事者への取材を重ねた「推し活」の現在地

「推し」という言葉は、「好きなものを応援する」ポジティブな言葉として使われることが多い。
だが、アニメグッズを購入したり、アイドルのコンサートに参加したりすることだけでなく、たとえば地下アイドルライブでのチェキの大量購入、ホストクラブやメンズ・コンセプトカフェでの過激な売り掛けなどを表す際にもこの言葉は使われている。
少なくとも、言葉のうえでは、学生のささやかな「推し」と、身を滅ぼすほどの出費をともなう「推し」は地続きだ。

「高田馬場ライバー刺殺事件」をはじめ、「推し」を端緒とした刑事事件も発生している。その精神性の根が同じであるならば、私たちは「推し」とは何かを慎重に見極める必要がある。
実際に「推し」によって人生を大きく変える選択をした人々の言葉に耳を傾けることで、「推し」の何が人々を病的なまでにエスカレートさせていくのかを探る。

第一章 「結婚するなら、もちろんアイドル」
“「推し」のためにマンションを売った”トップオタ

第二章 「ホストはコスパがいい“推し活”」
“ホス狂い”風俗嬢のコスト意識

第三章 「二次元は“恋愛対象”になるか」
アニメ、VTuber、2.5次元、声優…オタクたち「推し活」

第四章 「結婚できなかったのはアノ子のせいじゃない」
女性アイドルを14年間推し続ける中年女性の憂鬱

第五章 「AV女優に求める純潔」
秩序を守るAV女優アイドル・トップオタの女子校教師

第六章 「“運営”は搾取をしているのか」
元ジャニーズJr. 地下アイドル運営の見果てぬ夢

第七章 「推しがいないこの世界に、生きる意味はない」
「推し」の後追いで「自殺未遂」した納棺師

第八章 「オタクとアイドルは運命を捻じ曲げて共に生きる」
オタクでアイドルだった彼女は、今日もSNSで未練を語る

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