塾の課題に忙殺され疲れきる子供たち

学歴が能力の証明として機能していたのは、誰もが公平な条件で勝負できるという前提があったからだ。地方の公立校から東大に進み、官僚や研究者として活躍する——そうしたルートが存在したからこそ、受験制度は社会的な正当性を持っていた。

しかし現在、難関大学の合格者は首都圏の中高一貫校出身者に偏っている。優秀な子どもが東京にだけ生まれるわけではない。にもかかわらず、トップ校の椅子は都心の、特定の塾に通える家庭の子どもたちによって占められている。

「能力の高い子どもたちが『まずはSAPIX』『できれば御三家』『とりあえず鉄緑会』『入れるなら医学部』と流れるように進んでいく。でも、その時々の動機は極めて幼稚か、何も考えていない。

そしてこのレールは永遠には続きません。いずれ『次のコース』が用意されていない地点に誰もが到達する。そのとき、自分で道を選んだ経験のない人間は何を頼りに歩くのでしょうか」(教育専門家)

『合格おめでとう 次は東大!』有名中学の合格者が殺到する“謎のエリート専用進学塾”の正体…親の電話かけが早くもスタート_5
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鉄緑会は圧倒的な合格実績を誇り、OB・OGがアルバイト講師として後輩を指導する循環も生まれている。しかし、本当にこれでいいのかという疑問は残る。

「有名中高一貫校の出身者と話すと、もったいないと感じる場面が多い。中高6年間、優秀な仲間と自由に過ごせる時間があるのに、塾の課題に忙殺されている。入学後の彼らを見ると、疲れ切っていて伸びしろが少ないように感じることもあります」

受験制度の耐用年数が尽きたと言われて久しい。それでも毎年2月、有名中学の合格発表が終わると、保護者たちは鉄緑会に電話をかける。そのサイクルは当面、変わりそうにない。

文/平河らむ