軍事や憲法九条を見ないふりして、外交力のみを持ち出すリベラル女性識者
だが、残念なのは彼ら・彼女らが「自身の感じている不満を、ナショナリズムに由来するものだとは認めないこと」であり、「では日本がアメリカから自立するために何が必要か」と聞かれた際に、軍事や憲法九条を見ないふりして、外交力のみを持ち出す点である。
一方、高市支持派は「高市の反応は、関西のおばちゃんのリアクションとしては普通レベル」「(保険商品をセールスする)生保レディだと思えば、かなりやり手」などと評価している。だが、事は一国の総理の振る舞いである。
さらには靖国参拝を早速取り下げた高市を批判するでもなく、「行きたい気持ちはあるが、今は戦略的に我慢しているんだ」と、やはり安倍政権期によく聞いた擁護を再現している。
臨時国会中の台湾有事を想定した存立危機事態についての答弁では、仮定の話を「うっかり」披露して大ごとになった。米軍来援時の集団的自衛権行使の問題についてだが、何の戦略も下準備もなく踏み込んだ発言をし、批判を受けて「もう具体的な想定は口にしない」と述べた。
高市支持派は発言も支持しているが、安倍が「台湾有事は日本有事、日米同盟の問題でもある」と述べたのは、あくまでも総理退任後である。
日米関係のあるべき姿
各国にとっての第二次トランプ政権は、第一次よりも外交を行うのが困難な状態にあるのは確かである。
経済であれ安全保障であれ、国益がかかる中にあって、アメリカと自国の関係がトランプの一存で左右されるとなれば、安倍の〈「あなたは立派だ」と口頭で褒めることですべてがうまくいくならばそれに越したことはありません〉(『安倍晋三回顧録』)との言葉はより重く響く。
であれば、トランプをこれでもかともてなすことこそが、やはり日本外交の正解なのかもしれない。だが――。
筆者が折に触れてかみしめている言葉を引いて、本稿を終えたい。
〈国家が追求すべき価値の問題を考慮しないならば、現実主義は現実追従主義に陥るか、もしくはシニシズムに堕する危険がある〉(高坂正堯「現実主義者の平和論」、『中央公論』1963年1月号)
このままいけば、トランプの任期は少なくとも2029年1月20日まで続く。高市政権が何年続くかは現時点では不明だが、あと何回か、日米首脳会談は行われるだろう。自他ともに、あるいは支持派、批判派ともに「女安倍」と認める高市が、トランプとどのような外交を展開するのか、今後の日米関係を見届けたい。
文/梶原麻衣子 写真/shutterstock













