初回から安倍時代を上回る歓待を演出した高市政権

さらに高市は、トランプをノーベル平和賞受賞者に推薦すると伝えたと報じられている。安倍も推薦はしていたものの、「したとは言わない」と明言を避けていた。高市もこれに倣ってか、国会では推薦の事実について明言しなかった。

高市の前に首相を務めた石破茂もトランプとの会談を行う際には、実に30時間にわたって外務省のレクを受け、安倍との交渉記録を読み込んだという。安倍とトランプの外交が、日本の対トランプ外交の基準となることは誰が首相であっても避けられない。

むしろ、高市政権は、「安倍外交がスタートラインの基準線となる」とばかりに、初回から安倍時代を上回る歓待を演出したのではないかと思えるほどだ。

だが、こうした光景が、安倍・トランプ時代と同様、いやそれ以上に、我々日本国民の心を大いに揺さぶることとなった。

「女安倍」高市の対トランプ外交と日本の分断の行方

「安倍の遺産を生かした、高市外交の成功」「日米黄金時代の再来だ」と高く評価する高市支持派がいる一方、「あまりにもアメリカに媚びている」「なぜ保守派は怒らないのか」「主権はどうなった」との批判派の嘆きや怒りも飛び交った。

高市が女性であることで、安倍・トランプ時代にはなかったジェンダー要素も加わったため、リベラル派の女性識者たちの葛藤は目に見えて高まった。

高市早苗総理
高市早苗総理

朝日新聞の高橋純子編集委員はコラムに〈消音にしているはずのテレビから、キャピッ、キャピキャピッと音がする。画面の中で高市早苗首相が、トランプ米大統領の隣ではしゃいでいた〉〈首相たるもの、外交の場でへつらうな。毅然としてくれ。これらは首相の性別とはまったく関係のない一般的な要望だ〉と書いた(2025年11月8日付朝日新聞デジタル)。

また、後に撤回したが、高市の振る舞いを「『現地妻』という悲しい言葉を思い出す」と評した元国会議員の女性もいた。女性初の総理誕生は「ガラスの天井を破った」と表現されてもいいはずだが、上智大学法学部教授の三浦まりは〈小さな穴が開いた、というのが実際のところ〉と評している(「右傾化する政党政治――野党の存在意義とは」、今井貴子との対談、『世界』2025年12月号)。

もちろん日米同盟、日米関係は重要である。そのうえで対米自立を望む筆者としては、「アメリカに媚びなければならない日本を憂うナショナリストが、こんなにも(高市批判派、つまりリベラル・左派に)いたのか」との意を強くした。

皮肉ではない、高市・トランプの関係性に「対米屈従感」を感じるのは、ナショナリズムあればこそだからである。