“昭和カラー”の火付け役はダイハツだった? 古すぎて資料がない中たどり着いたのは……
では、昭和30年代に流行り、車や家電にも使われた薄い黄緑の“昭和レトロ色”に、元ネタや先駆けのような存在はあるのだろうか。これについては、冨永氏の私見として「昭和30年代のダイハツミゼットとか、ああいう薄緑に影響されたんじゃないかなと思います」と分析してくれた。
これを受け、続いてはダイハツ工業に「なぜ車体に薄緑色を採用したのか」を問い合わせてみたが、時代が古すぎることもあり、オフィシャルとして回答できる素材はないという。しかし、調査を進める中で、当時を知る関係者からの証言を得ることができた。
「意匠上の偶然ではなく、商用車としての実用性・時代背景・用途から生まれたのだと思います。初代ミゼット(1957年発売)は商店・行商・配達などを担う三輪の実用商用車として開発されたのですが、当時の商用車では汚れが目立ちにくい・落ち着いた印象・威圧感がないといった理由から、グリーン系が最適な色と考えられていました。
また、1950年代はまだ塗料の選択肢が限られていた時代です。高級な乗用車にはネイビーや黒が使われていましたが、緑系塗料は耐候性が高く、色ムラが出にくく、調達・コスト面で安定という点で量産向きだったんです。コストが安定し、汚れの目立たない色を使っていたのはある種当たり前で、結果としてミゼットが一強になって、若草色の印象が強くなったのだと思います」
実はここ最近、『アラジン』のトースター をはじめ、日本ではミントグリーン・ターコイズブルー・パステルグリーンと銘打った黄緑色の家電が増えている。時代が何周もして、今の若い人々には“黄緑色=古臭い”と敬遠する意識はないのかもしれない。
“昭和は遠くなりにけり”というが、家電の流行色に関してはむしろ回帰していると言えるかも?
取材・文/久保慎













