「うんこ部分を何にするか」プロフェッショナルの現場
――プラモデルをつくる「ホビーディビジョン」として、ねんどを“メイン”に据えるのは、かなり珍しいことだったのでは?
安部 事業部としては初めてだったと思います。紙ねんどに関しては、他事業部でのジオラマ用の大人向け素材としてはあったかもしれませんが、少なくとも社内で確認できる範囲では前例が見当たりませんでした。
――材質選びでは、特にどのあたりに一番こだわりましたか。
安部 最初から、「柔らかいものにプラモデルのパーツを刺す」という構造自体は決まっていました。ただ、「うんこ部分を何にするか」は決まっていなかったんです。ねり消しやスライムなど、いろいろ試しましたが、その中で軽量紙ねんどが一番しっくりきました。
手に取りやすい価格、触り心地、汚れにくさ、安全基準(STマーク)が取れるかどうか。条件はいくつもありました。さらに、軽さも重要でした。重いと自重で崩れたり、足にめり込んで立たなくなったりしてしまうので。
自分も子どもが2人いるので実感があるのですが、今の子どもたちは100円ショップなどで今回のような軽量紙ねんどに触れる機会が多い。素材としてのハードルが低いんです。乾いた後の質感も良くて、遊びやすさ、手触り、安全性、質感。その全部を意識しました。
――開発を進める中で、「ここが一番の頑張りどころだ」と感じたのはどのあたりでしたか。
安部 設計の視点でいうと、いかに簡単に、きれいな“うんこ”を作れるか。そこにみんなが真剣に向き合ってくれました。
――商品化までの過程で、社内で一番悩んだポイントはどこでしたか。
安部 「商品化そのものがNG」という壁はあまりなく、一番議論になったのは、「うんこ」と呼ぶか「うんち」と呼ぶかでした(笑)。結局、両方になったんですけどね。
もともと、「チャレンジ案件」だという認識をみんな持っていたのも大きいと思います。ほかの商品でももっと揉めることはあるので、会社としてはそこまで大きく突っかからなかった印象です。
――社内を見渡してみて、これまでにも「これは攻めていたな」と思うオリジナル企画はありましたか。
安部 自分が生まれた1988年頃に、「ゲゲボ魔獣」というシリーズがありました。異素材を組み合わせたオリジナルIPで、ウンコスルデイズの話をすると、社内外で「ゲゲボ魔獣を思い出す」と言ってくださる方が結構います。
それだけ、記憶に残るインパクトが強かったんだと思います。エンタメである以上、無風よりは、どんな形でも記憶に残るほうが面白いなと。
迷いと理屈、そして覚悟の末にたどり着いた“うんこ”は、約37年ぶりに社内でも語り継がれるだろう、異色のオリジナル企画となった。後編では、「ウンコスルデイズ」が世に出たあと、どんな賛否が渦巻いたのか。その手応えと戸惑いを語ってもらう。
取材・文・撮影/ライター神山













