賢くなった現代人、2026年の丙午は出生数に「ほとんど影響はない」

こうして就職した後、丙午世代を待ち受けていたのは……。

「私たち丙午は、女性が社会進出していった最初のグループには入っていると思います。というのも、就職したのは1986年の男女雇用機会均等法が施行されてから数年後で、“雇用の男女差別がもういけないんだよ”っていう時代に突入した頃だったんです。

社内2人目の女性社員アナとして働いていたころの脇浜教授(写真/本人提供)
社内2人目の女性社員アナとして働いていたころの脇浜教授(写真/本人提供)

同法ができるまでは、私のいた読売テレビでも、女性アナウンサーは契約社員しかいなくて。私の1学年上の先輩(その人も丙午だったんですが)が正社員初の女性アナウンサーで、私が2人目だったんです。

でもその代わり、先例として“男と同じぐらいできるんだ”と証明しなくてはならず、たくさん働いた世代でもあると思います。その影響か、結婚より仕事を優先することになった人もいましたから」

今回の影響についてはどうなのだろうか。

1966年に急激な出生率低下を招いた丙午だが、公共政策に係る調査研究を行うSOMPOインスティチュート・プラス公共政策調査部の上級研究員・小池理人氏は、「現代ではほとんど影響はない」と分析する。

SOMPOインスティチュート・プラス公共政策調査部の上級研究員・小池理人氏(写真/本人提供)
SOMPOインスティチュート・プラス公共政策調査部の上級研究員・小池理人氏(写真/本人提供)
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「インターネットやSNSの発達によって、実際の丙午生まれの人の事例に触れることが容易になっており、一連のいわれが迷信にすぎないことが実感を持って理解しやすくなっています。Xでは不確定な投稿に注釈をつけられるコミュニティノートなどの仕組みも存在しており、科学的根拠の乏しい情報への指摘が入りやすいことも、丙午の影響が小さくなる理由として挙げられるでしょう。

また、現代では晩婚化・晩産化が進んでいるため、回避するべきは迷信ではなく高齢出産となっています。ただでさえ出産が高齢化するなか、出産を1年間遅らせるコストは、1966年当時よりも遥かに高い状況です」(小池氏、以下同)

迷信に左右されなくなったのは喜ばしいが、いっぽうで、現代は少子化そのものが危機的状況にある。

「昨今は婚姻件数の減少が著しい状況です。夫婦に対する子育て支援は徐々に拡充してきていますが、その前段階である婚姻件数が伸びていないため、既存の子育て支援が十分に出生数を押し上げられていない状況となっています」

12月4日に日本総合研究所が発表した試算によると、2025年の出生数は66万5000人で過去最低を更新する見通しだ。今から「丙午=火の馬の年に生まれるなんて神々しい!」というキャンペーンでも張り、来年の出生数を70万台に回復できたらよいのだが……。

取材・文/久保慎