「人間にファーストもセカンドもないでしょう」

――土葬の問題もそうですが、ネットの攻撃でもう一つ目につくのは、日本で暮らす外国人を標的にするものです。今年の参議院選挙でさらに激しくなりました。

一部に法を犯す外国人がいることは事実であり、それには厳格な対応が必要ですが、それは日本人にもたくさんいるわけで、最近では東南アジアでしょっちゅう日本人が詐欺で摘発されたりしているでしょう。

「ナントカ人」とか「外国人」とかとくくって考えるのがおかしなことだと思います。個々人なわけですからね。そして大半の外国人は日本のあらゆるところであらゆる業種にいま従事をしてもらっています。私の地元でも建設業、水産業、農業、水産加工業、最近では福祉の分野でも外国の方がいなければ回らないようになってきていますし、他の地域でもそうでしょう。

これだけ円が安くなった日本を選んでくれて、日本に来て真面目に一生懸命働いてくれている、あるいは学んでくれている。それをひとくくりにして非難や攻撃するのはまさに偏った排外主義じゃないでしょうか。

自ら筆を執った「百術は一誠に如かず」の文字の横に立つ岩屋毅前外相(撮影/集英社オンライン)
自ら筆を執った「百術は一誠に如かず」の文字の横に立つ岩屋毅前外相(撮影/集英社オンライン)

――「日本人ファースト」という言葉をどう思いますか。

人間にファーストもセカンドもないでしょう。人間ファーストと考えるべきだと思います。

夏の参院選で「日本人ファースト」を掲げ、大躍進した参政党(写真/集英社オンライン)
夏の参院選で「日本人ファースト」を掲げ、大躍進した参政党(写真/集英社オンライン)

――夏の参議院選挙は「日本人ファースト」という言葉が飛び交いました。自民党の言葉ではないですが、この言葉が広がる前に政府が「不法滞在者ゼロプラン」を言い始め、自民党は「違法外国人ゼロ」を選挙公約にしました。それがあのような選挙になる口火を切ったのではないですか。

私も、ちょっとあのタイミングってのはどうだったのかなと思います。というのは、政府に「外国人との秩序ある共生社会推進室」を立ち上げたのは参議院選挙の最中だったんですよね。

だから正直に言うと排外的な主張が高まる中で「政府自民党もちゃんとそういう声は受け止めてますよ」と示さんがための本部設立だったような気がしてならなかったですね。言ってみれば選挙対策ですよね。でもそういう動機で扱ってはいけない問題なんだと思います。

政府、自民党に立ち上げた本部は、まさに外国の方々との秩序ある共生社会を作るためにどうすべきか議論をしたり制度を作ったりしていかなければいけないと思いますね。

「外国人取締本部」みたいに思われたのではいけない。これだけ日本に来て頑張ってくれている人たちと秩序ある共生をするためにはどうしたらいいかを冷静に丁寧に議論し、その環境を整えていくべきだと思っています。