発言者の正体は総理の飲み友達

政権に少なくない波紋を投げかけた「官邸筋」のオフレコ発言だが、気になるのはその発言者の正体である。一部には「高市首相に安保政策を助言する立場」にあるともされるその人物とは一体誰なのか。

「発言したのは安全保障政策を担当する官邸側近の一人であるX氏だとみられています」と声を潜めて話すのは、前出の全国紙政治部記者である。

名前が挙がったX氏は高市政権の発足に伴い、10月に現職に就任したばかりだ。関係者によると、安全保障に関連する省庁に席を置いていた経験もあり、米国への留学経験もある。高市政権で要職に就くだけでなく、閣僚の政策参与として安保政策に関するブレーンを務めた、ともされる。

高市総理(内閣府広報SNSより)
高市総理(内閣府広報SNSより)

高市首相がインターネット上に公開しているコラムでも「飲み友達」などと親密さをアピールした上で、安保政策についてのアドバイスを得ていたことを明かしている。

コラムでは、X氏の助言を受けた上で、政権発足直後に「前倒し改定」を発表した安全保障関連三文書(安保三文書)にも「敵基地攻撃能力」として明記されたミサイル防衛戦略について自民党の政権公約に盛り込んだことも示唆しており、高市首相にとって、自身の思い描く防衛政策を形作る上での指針となる存在であることがうかがえる。

X氏は、いわば高市首相にとっては、「身内中の身内」に当たる人物というわけだ。高市政権下の安保政策については、高市首相自身が、国会で「台湾有事」が起きた際の「存立危機事態」についての認識で踏み込んだ答弁をしてしまい、外交問題に発展する事態を招いた経緯がある。

そもそも波紋を呼んだ高市首相の国会答弁が、官僚作成のものではなく自身のアドリブ発言だったことも明らかになっている。側近から飛び出した今回の発言は、政権の不安定さをさらに強く印象づけるものとなってしまった形だ。

防衛省
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班