男としてのプレッシャーをレイプで解消
私は人生で一度も恋愛をしたことがありません。女性に対する性欲はありますが、この子が可愛いとか自分のものにしたいといった感情を抱いたことがないのです。もちろん、男性が好きということもありません。
ただ、学生時代は駅で泥酔している女性を見かけては強姦しました。
私は女性より仕事に興味があり、第一志望の大企業に就職することができました。入社してからも勉強と努力を惜しみませんでしたが、女遊びばかりしている上司や同僚が、一流企業にもいるという事実に、内心失望していました。
入社した年の暮れ、実家に帰省すると、早速見合い話を持ち掛けられました。相手は、父の友人の娘で東京に住んでいるといいます。私はいつか実家に戻ってこいと言われることを怖れていましたが、東京の女性と結婚すれば実家とも距離を置けるだろうと、見合い話を受けることに決めました。その女性と一年間交際した後、結婚したのです。
子どももふたり生まれ、穏やかな日々が続いていました。私は親になったことで、歪んだ欲望が消えたものだと思い込んでいました。
ところがしばらくすると、夫婦関係がぎくしゃくし始めました。原因は子育てです。
長男は成績が良く中学受験も難なくこなす一方、長女の成績は芳しくありませんでした。女の子だし、私は全く気にしていなかったのですが、妻は長女の教育に干渉するようになっていました。それでも中学受験は失敗。落ち込んだのは娘より妻の方です。
「もう恥ずかしくて外に出られない」
「そんなこと言うなよ。娘が可哀想だろ」
「あなたは家にいないから気持ちがわからないのよ!」
昔は穏やかだった妻が、ヒステリックになることが増えていきました。私は夫の社会的地位や子どもの学歴で競う女たちに対し、どうしても嫌悪感を抱いてしまいます。
親バカだとは思いますが、娘はとても愛らしい顔立ちをしていました。学校でも人気があったと思います。そんな娘が、ある日、街でスカウトされたというのです。まだ中学生でしたから、もちろん断りましたが、この辺りから妻は、娘を芸能の道に進ませようと考え始めました。
高校に入学するなり、娘は歌やダンスのレッスンを増やし、オーディションを受けるようになりました。私は十代で化粧する娘の顔を見ることが苦痛でした。
それでも、本人がやりたいというので止めることもできず……。長男は放っておいても勉強ができるので、母親は娘に時間を費やすようになっていました。
私は芸能界などには興味がないし、そんな話は聞きたくもないので、夫婦の会話も徐々になくなっていきました。子どもたちが小さい頃は家族旅行にも出かけましたが、成長するにつれて家族の行事を嫌がるようになり、私はどこか孤独で、またストレスを感じるようになっていたのです。
そして、再び犯罪を起こすようになりました。私は夜道で女性を強姦しようとして抵抗され、逮捕されたのです。しかし運よく、実名は報道されませんでした。
当時は勝手に一流企業の社員だから警察が伏せてくれたと思い込んでいたのですが、むしろ社会的影響が大きいゆえに報道される可能性が高いと聞き、実名報道されずに本当にラッキーだったと思いました。
私は強姦する意思などなかったと噓を吐き、被害女性に謝罪文を送り、五百万円程度の示談金を払い、家族にも会社にもバレることなく不起訴処分となったのです。
この経験は、犯行意欲に弾みをつけてしまいました。強姦には失敗していますから、綿密な犯行の計画を立てました。
この頃になると、夜出かけても、妻は反応すらしなくなっていました。私は車で出かけ、夜道を歩いている女性を見つけては犯行に及んでいました。
強姦に及ぶと身体中に溜まった怒りが発散され、スッキリするのです。しかし、すぐに罪悪感や後悔の念、捕まる不安などが襲ってきて、その恐怖から逃れるために、また犯行を繰り返す……、そんな日々が続いていました。誰か止めてくれ、心の中ではそう叫んでいたのです。
逮捕された瞬間、ようやく「解放される」と感じました。今度は起訴される覚悟はしていましたが、私は示談さえすれば刑務所に行くことはないと考えていました。刑務所は、貧乏人の行くところだと思っていたのです。
ところが、くだされた判決は十年──。私は愕然としました。













