家族で30万円 帰省が贅沢な選択に
いっぽうで鹿児島出身で都内在住の30代女性は、さらに切実な現実を語る。
「年末年始の帰省は、ほとんど諦めています。給料は年々上がっていますが、それ以上に物価も上がっていて、飛行機代の割高感はずっと変わりません。
また、5年前に都内で結婚して子どもも生まれたので、家族3人で帰省すると往復で30万円ほどかかる計算になります。さすがに現実的ではありません。年末年始にしか会えない親戚や地元の友人との関係は、もう終わったものだと受け入れています」
家族構成が変われば、帰省コストは一気に跳ね上がる。「帰れない」わけではないが、「払う意味を考えてしまう」金額になっているのが現実だ。
マイルを使う、LCCを探す、半年以上前から予約する、夜行バスや新幹線を組み合わせる――など、工夫次第で賄える面もあるが、工夫を前提にしなければならない時点で、帰省は“軽い選択”ではなくなっている。
年末年始の帰省は、「当たり前に帰る年中行事」から、「コストと相談して決める、覚悟のいる選択」へと変わりつつある。
特にコロナ禍で移動を控える期間を経験し、「帰らなくても成立する年末年始」を知った人は少なくない。その体験を経て、「帰らない正月」は、特別な選択ではなく、現実的な選択肢のひとつになった。
高額な費用をかけてまで帰省するべきなのか。2025年の年末、実家に「帰る・帰らない」は気持ちだけで決めるものではなく、家計と相談して判断されるものになりつつある。
それは冷たい変化ではない。多くの人が現実と折り合いをつけながら選び取っている、ごく自然な変化なのだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部













