これからのメディアの生き残る道
数社での創刊編集長を経て、70歳で業界からのリタイアを宣言したという岸田さん。だが、完全に手を引いたわけではない。コンサルタントや相談役として、今も多くの相談が舞い込む。
「よく言われるのは、“3億円、5億円用意しますから、もう一度『LEON』みたいなのを作りませんか”って。でも無理ですよって答えています」
それでも、新しい雑誌を一緒に作ろうという誘いは絶えない。だが、岸田さんの答えは明快だ。
「5億円出せば作れるってもんじゃないんですよ。お金の問題じゃない。時代も違うし、メディア環境も全然違う」
そんな岸田さんはYouTubeも始めた。4、5年前、広告代理店の知人から「何もしないのもいけないでしょ」と勧められたのがきっかけだ。
「知人が『それでいい』っていうので、車とか自転車とかレストランとか、自分が土日やっているような、好きなことを上げているだけなんですけどね。それでもあっという間に2、3万人ぐらい集まってくれて。でも、YouTubeやったところで、そんなに収入が入るものでもないですしね」
デジタル全盛の時代。だが、岸田さんは「Webでは稼げない」と断言する。
「『LEON』でやったような面白いコンテンツって、Webでも作れると思うんですよ。動画を使ったりして、アップデートな情報を伝えることができる。ただね、儲からない」
雑誌の広告ビジネスは、驚くほど効率が良かった。
「『LEON』は、創刊、4年目ぐらいで広告料上げましたから。1ページ(の広告料)が200万円近いんです。そんな価格での商売は、Webではできないですよ」
コンテンツは作れる。だが、効率よくビジネスにするのは難しい。
「どこのメディアも苦戦しているでしょうね。有料でもいいんですけど、効率よくできるかっていったら、なかなか難しいと思いますよ」
それでも、可能性はあると岸田さんは言う。
「今は多様化の時代なだけあって、人々の関心事もますます多様化している。だから、たくさんの人に向けての薄利多売の雑誌って無理だと思う。
だから、少部数で確実に儲かるっていうメディアしか通用しないと思う。確実な読者をとらえ続けて、そこでビジネスを成り立たせることができれば、まだチャンスはあると思いますよ」
ファンビジネス。それが、これからのメディアの生き残る道だという。













