「亀有の夜はやさしく!?の巻」(ジャンプ・コミックス第9巻収録)

本作で起こる出来事は、酔っ払ったサラリーマンの相手からゴキブリ駆除を頼んでくる女性の部屋を訪ねる、深酒をして深夜帰宅をした亭主と嫁さんの間を取り持つ……と、深夜勤務をしている「おまわりさん」が被りそうな面倒ごとばかりだ。

『こち亀』の連載がはじまってまだ2年目の1978年に描かれた本作、両さんが東京都を水没させたり、天国と地獄の支配者の座についたりするといった後年の「何でもあり」な世界観からすると、下町人情喜劇の体裁を保っているのは興味深く、またなんとも言いがたい味わいを醸し出している。

さて、本作をお読みいただく前に、派出所(現代では「交番」)における警察官の勤務について少しご紹介しておこう。

ご存じの通り、交番は24時間体制で任務を行っているが、そこに勤める警察官は、当番、非番、週休(もしくは日勤)という3日間のローテーションを基本にして働いている。ただし当番の日はほぼ24時間におよぶ勤務をしているため、非番の日=一般的な週末の休日……と同じ「お休みの日」という捉え方はできないだろう。睡眠とともに心身を休めて、次の勤務や非常時に備えるための時間なのだ。

ちなみに、警視庁は全国警察のなかで唯一、4交替制勤務を採用している組織だ。東京という圧倒的に多くの人口を抱えている地域ゆえに、発生する事件や事故の件数も多いためだ。4交代制にすることで、より多くの警察官が必要なのは言うまでもないが、多忙を極める警察官ひとりひとりの負荷を軽減するには不可欠な体制なのだろう。

リアルに考えると、『こち亀』における亀有公園前派出所の要員はあまりに少なすぎるのだが……。ただ、両さんが4話ごとにしか登場しない『こち亀』を読みたいか? と問われると、その答えは言うまでもないだろう。

それでは次のページから、ひとり夜勤中の両さんが巻き込まれる騒動の数々をお楽しみください!!