平成イケメンは、なぜ今なお愛されるのか
平成中期イケメンが居並ぶ「イケナイ太陽」のMVに、今も心を動かされる人が多いのはなぜか。
2000年代当時に青春時代を過ごした人たちにとって、あの髪型は自己表現そのものだったからだろう。
前髪をまっすぐに整え、襟足のラインを指先で確かめ、少し眉を細くする。それは恋をする準備であり、世界と向き合う儀式でもあった。
清潔で、優しくて、ちょっと色気があるそんな男子像を、平成一桁世代の女子たちは“安心して愛せるイケメン”として受け止めていたのだろう。
平成中期という時代は、日本の経済も世界情勢も社会の価値観も不安定だった。
若さゆえの陽気さに包まれながら、どこかで将来への不安と傷つきやすさを抱えていた世代。
そんな平成中期のイケメン像は、いま見れば少し気恥ずかしい感じもする。それでも、清潔で優しく、どこか一生懸命だった彼らの姿には、当時の空気が確かに息づいているようだ。
その姿には、あの時代のまっすぐさが宿っている。だから、いま見ても不思議と胸を打つのかもしれない。
文/佐藤誠二朗













