奈良へ「出戻り」したメリット、デメリット 

――奈良に帰ってみて、デメリットはないですか? 
 
デメリットは、恋愛がしづらいことです。漫画にはあまり描いてきませんでしたが、私は恋愛したいんですよ! ですが、奈良の同年代は、男女問わずもう結婚してお子さんもいる、という人がほとんどです! 

マチアプ(マッチングアプリ)も奈良県内で探すと同年代男性が少ない。離婚後に関東でマチアプを見ていたときはたくさんいたんですが……。あと奈良のマチアプ男性は、顔を隠した写真を載せている人が多いですね。知り合いに見つかる可能性が、関東よりも高いせいですかね。 腹をくくって出してほしいです……。
 
――逆にメリット、良かったことはありますか? 
 
中年になって奈良に戻ったからこそ良かったのは、大仏とか文化財がおもしろいと思えるようになったことですね。10 代 20 代の頃は、寺社仏閣や古墳なんてつまらん、と思うじゃないですか。

でも父が亡くなって遺品整理をしたり、自分が離婚したり、色々な経験をした今、正倉院の宝物とか大仏とかのことを調べてみると、見え方が変わりました。奈良の「執念」「ねばり強さ」みたいなものに気づいたんです。

聖武天皇の遺品を 1300 年以上にわたって保存し続けたり、大仏だって戦や経年劣化で壊れたものを何度も再建したり……諦めなかった人たちの強さというか、パワーを感じるんですよね。

それも、奈良はがむしゃらな強さというよりも「なんとかなるやろ」と信じる強さがある気がします。もしかすると、人間だけではなくて鹿と長いこと共生してきたおかげなのかな、とも思います。寛容さと強さの不思議なバランス感覚があるんじゃないかなぁ。

『出戻りて、奈良。』収録「大仏さまのお身拭い」より©蟹めんま/ホーム社
『出戻りて、奈良。』収録「大仏さまのお身拭い」より©蟹めんま/ホーム社