猟友会メンバー「早くしないと大変な状態に」

「根本的にはヒグマの数が多すぎる。早くしないと大変な状態になる」(猟友会メンバーのNHK取材へのコメント)

この言葉は、対策が現実の脅威に全く追いついていないことを示している。

この日本の現状は、序章に過ぎないのかもしれない。我々が目を背けてきた厳しい現実が、すぐ北の地、サハリンで牙を剥いた。北海道と海を隔てただけの場所で起きた惨劇は、日本の未来を予言しているかのようだ。

2025年6月、ロシア・サハリン州の州都ユジノサハリンスク。その郊外にある「三頭の鹿」の彫刻は、市民の憩いの場として知られていた。悲劇は、幹線道路からわずか50メートルほどしか離れていない森林で起きた。ありふれた日常の風景が、一瞬にして地獄へと変わった。

一頭の巨大なヒグマが、何の前触れもなく人々に襲いかかった。襲われた男性の一人は、深手を負いながらも自ら救急車を要請する。しかし、その願いは届かなかった。男性は、駆けつけた救急車の車内で、おびただしい出血により息を引き取った。

写真はイメージです
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このヒグマは違った。救助隊が到着しても、全く動じない

異常事態は、ここからさらにエスカレートする。通常、人を襲ったヒグマは現場から立ち去ることが多い。だが、このヒグマは違った。

救助隊や警察が到着しても、全く動じることなく現場に居座り続けたのだ。救助活動を行おうとする人間を威嚇し、近づけさせない。車両のクラクションや人々の叫び声にも無反応。その姿は、人間を対等な存在、あるいは脅威とすら認識していないかのようであった。

専門家が銃で威嚇射撃を行い、ようやくその場を離れたという。この執拗さは、野生動物の行動様式を明らかに逸脱していた。

そして、捜査員たちは現場でさらに戦慄すべきものを発見する。最初の犠牲者からほど近い場所で、別の男性の遺体が見つかったのだ。遺体には数日前に襲われた痕跡があり、そして、土や落ち葉で浅く埋められていた。

これは何を意味するのか。ヒグマが、殺害した人間を「食料」として認識し、後で食べるために貯蔵していたということである。これは単なる偶発的な遭遇事故ではない。人間が、捕食者であるヒグマの「獲物リスト」に加えられた瞬間であった。

我々が築き上げてきた文明社会のすぐ隣で、人間は食物連鎖の頂点から引きずり下ろされ、単なる肉塊として扱われたのである。