「健全な競争環境をつくるために、新人が一定数入ってくることは必須」

――「衆議院の比例議席削減」について、かなり明確に反対していますね。

安野貴博(以下、同) 
一番の理由は政治家の新陳代謝が妨げられることです。比例の議員が減らされると、“地盤、看板、カバン”を持つ世襲の人ではない、普通の人が最も当選しやすい道がつぶされ、例えばわれわれみたいなスタートアップ政党は国会に出られなくなります。

また今の年代別の人口構成を考えると、若い人の意見にフォーカスする候補は票を集めるのに不利になります。50.1%の得票で当選する小選挙区制(ばかり)では、49.9%で落選する側に入るだろう若者や現役、パパママ世代の声が政治に届くのは不利な状況になるでしょう。

新政党「チームみらい」の安野貴博党首(撮影/村上庄吾)
新政党「チームみらい」の安野貴博党首(撮影/村上庄吾)
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――新しい政党がなくなると?

例えば、維新さんももともと比例区で当選した人が多いです。吉村さん(維新の会の吉村洋文代表)もかつては比例で復活当選している。その後、小選挙区で徐々に勝てるようになってきて、今は比例当選議員の比率が減ったわけです。なので、新しい政治勢力が力をつけるという“政党の新陳代謝”でも比例区が果たしている役割は大きいです。

――比例で大きくなった維新が後続の新たな政党を切り捨てようとするように見える?

党利党略を考えれば、この戦略はすごく考え込まれたものだと思います。特に維新さんは地域政党色が強く、(今は)小選挙区が強い。そういう中で自民さんと維新さんがこれを言っても、自分たちの身はあまり切らず他党の身を切ることになります。

それによってデメリットをこうむるのは、自分が票を投じた人が当選できなくなる確率が高くなる有権者なので、そこは冷静に見た方がいいと思います。

連立政権の合意書に署名した吉村洋文氏と高市早苗氏(自民党広報Xより)
連立政権の合意書に署名した吉村洋文氏と高市早苗氏(自民党広報Xより)

――リアルな危機感があるんですね。

われわれの理想はいろんな人の声がしっかり届く国会を作るべきだというもので、(テクノロジーを駆使した)“デジタル民主主義”の導入を提案するのもそのためです。

政治には二大政党が切磋琢磨するアメリカモデルと、いろんな意見の代弁者が国会に入り様々な政党が連立を組んで穏健な多党化を目指すモデル、この2つがあります。

日本で小選挙区制を導入した時は二大政党制を志向した議論がありました。しかし、その後の30年でSNSやネットの普及を通じて世の中の価値観が多様化し、二大政党制を志向した制度があるにもかかわらず多党化がより進みました。

われわれは2つしか選択肢がないよりも、10個、20個とあって建設的に議論し合いながら合意形成していく国会の方が望ましいと思っています。

参議院議員会館の安野さんの部屋は芝生風の絨毯(撮影/村上庄吾)
参議院議員会館の安野さんの部屋は芝生風の絨毯(撮影/村上庄吾)

――「政治家がこんなに多くいて無駄」「議員を減らせば節約できる」との声もあります。

無駄遣いはもちろん減らすべきで、仕事をする議員が増えるべきです。そのためにも新陳代謝が起きた方がいい。「仕事をしなければ次の選挙で落ちて新しい人にとって代わられる」というプレッシャーを議員に感じさせ、健全な競争環境をつくるためにも、新人が一定数入ってくることは必須でしょう。