牛肉と米の価格高騰でステーキ店に大打撃

「やっぱりませー!」の掛け声でお客を店内に迎え入れるステーキ店「やっぱりステーキ」。

2015年に沖縄・那覇で創業し、2020年には51店舗目で東京へ進出した飲食店チェーンだ。現在、国内外合わせて100店舗を超え、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで店舗数拡大を続けている。

看板商品は米国産のミスジ肉を使用した「やっぱりステーキ」(100g1500円、150g1900円、200g2300円※すべて税込)で、脂身が少ないのに肉々しさを感じられる味わいが、男性客だけでなく女性客からも支持を集めている。

とくに肉の部位が日替わりのランチステーキ(150g1000円〈税込〉)が注文できる昼時は、ビジネスマンや近隣住民で店内は大いに賑わっている。

やっぱりステーキ 神田店
やっぱりステーキ 神田店
すべての画像を見る

ランチでも食べられる価格のステーキ店といえば、(株)ペッパーフードサービスが経営する「いきなり!ステーキ」が有名だ。1000円台で食べられる本格ステーキを立ち食いスタイルで提供し、2019年には約500店舗を全国展開。

一時は国民的な認知度を誇るまでに店舗数を拡大したが、2022年には既存店の売上悪化による大規模な閉店ラッシュで世間の注目を集めた。2025年1月時点では約170店舗まで店舗数を縮小している。

また、帝国データバンクの調査によると2024年のステーキ店の倒産件数(負債1000万円以上、法的整理)は過去最多で、2年連続で増加傾向にある。

主な原因は、歴史的な円安で加速する米国産や欧州産などの輸入牛肉の価格高騰だ。

2024年の輸入牛肉の価格平均は100gあたり366円で、これは2019年比で24%の値上がり。加えて、ステーキ店では欠かせない白米も2024年夏頃から価格高騰し、とくに1000円〜3000円のリーズナブルな価格でステーキを提供していた店には、かつてない経営難が訪れたのだ。

「やっぱりステーキ」のステーキ(写真/やっぱりステーキ提供)
「やっぱりステーキ」のステーキ(写真/やっぱりステーキ提供)

客離れを確実に招く不用意な値上げ 

食材原価の高騰はステーキ店のみならず、飲食業界全体に荒波として押し寄せていることは消費者も肌で感じているだろう。

かつては“1000円の壁”と言われていたラーメンの価格でも相場が崩壊しつつあり、券売機で1000円札に加え小銭も投入する機会も珍しくなくなった。1皿100円をうたう寿司チェーン店では、以前よりも小ぶりになったシャリとネタに首をかしげたことがあるはずだ。

近年、店舗数と業績を拡大することに成功した「やっぱりステーキ」も例外ではなく、原価高騰に苦しめられたという。原価に合わせた価格設定のむずかしさについて、「やっぱりステーキ」の経営母体(株)ディーズプランニングの義元大蔵代表は、次のように語る。

「高騰した原価率を商品の価格やクオリティに反映させることは、来店してくださるお客さまの数に直結します。『やっぱりステーキ』でも昨年の初めに商品価格の値上げをしましたが、来店してくださるお客さまは50万人も減りました。

今年からいくつかの商品価格を下げたことで、お客さまの数は戻りましたが、原価高騰は飲食店にとって死活問題。値上げとお客さま離れの負のスパイラルに陥ったことで、倒産するステーキ店が過去最多になったのでしょう」

(株)ディーズプランニング代表取締役の義元大蔵氏(写真/やっぱりステーキ提供)
(株)ディーズプランニング代表取締役の義元大蔵氏(写真/やっぱりステーキ提供)

飲食店では予想売上に対して人件費30%、商品材料費30%で設計をするのが一般的。そこから店舗の家賃や水道費などの雑費が差し引かれた金額が営業利益だ。牛肉の価格高騰率はすでに触れた通りである。売上の3割を占める原価がこれだけ高騰して、客離れによる売上の下振れがあれば、あっという間に営業利益は赤字へと転落してしまうのだ。