県警は最初から責任回避を考えるばかり
法令適合のための事前アドバイスを期待していた県に対する県警の対応にも首を傾げてしまう。
県の示す工事設計図を見て、やんわりと安全性への懸念は伝えるものの、肝心要の射撃場が内閣府令に適合するかどうかについてはついぞ口にすることはなかった。その理由は以下のようなものだった。
「(認可の)申請を受けて、公安委員会が可否を判断するという制度であるので、申請を受け付けないかぎり、本来(県警は)何も発言するものではない」(2020年5月7日付の県警相談報告)
事前相談には応じない。完成した射撃場を見てから法令適合の可否を判断する――。それが警察側の言い分のすべてだった。
こうした警察の頑なな姿勢に、現役県庁マンのひとりがこう不満をぶつける。
「審査機関という立場から一歩踏み出して、同じ行政マンとしてどうしたら安中射撃場が法令に適合できるか、警察が県に協力してくれる様子はありませんでした。
というのも、図面を見て事前に法令適合のお墨付きを与えておいて、後になって不備が見つかったら警察の責任になってしまう。そのことを何よりも警戒しているようでした」
前出の業務報告書には、県警に協力を求める県側のこんな記述も見える。
「予算を投入して建設して、それでダメでしたではすまない。(ライフル射撃場整備の)過去の検討過程では警察も関わっていた。今さらの話でなく、開場に向けた検討について協力してほしい」(2020年4月6日付の県警相談報告)
さながら、県警に協力を求める県環境森林部の悲鳴のようだ。しかし、警察が県側の要請に応じることはついになかった。
「警察の対応が遅いせいで開場が遅れたと対外的に説明され、県警の責任となってしまうのではと気にしている」(2020年5月7日付県警相談報告)
「(県が作成した)資料にある『警察の指摘を踏まえ』という文言は、警察の指摘がもっと早ければよかったと受けとめられかねないので、この表現は遠慮してほしい」(前同)と、どこまでもつれない。
こうした責任回避、保身主義がなければ、安中射撃場はもう少しスムーズに開場にこぎつけることができたのではないか。