異例のスピード誘致が実現した背景 

「TUMO」の日本導入を最初に考えたのは河野太郎外相だった(当時)。2018年9月に外相としてアルメニアを訪問、現地で「TUMO」を視察し、その先進性に感銘を受けたことがきっかけだった。

ただ、受け入れ先がなかなか見つからない。そんな時に参院議員だった山本一太氏が2019年7月、群馬県知事に転身。県庁あげてのDX推進に取り組み、成果をあげていることを知った。

そこで河野は22年8月にデジタル担当大臣に就任したこともあって、旧知の山本知事に「群馬県にTUMOを導入しないか」と打診したという。

そこからはあれよあれよという間だった。23年5月から6月にかけて宇留賀副知事や鈴木がアルメニアを訪れ、7月に山本知事が正式に誘致を決断すると、その2か月後の9月には23年度補正予算案に『TUMO』の導入に係る基本構想費4000万円が盛り込まれることに。

鈴木が言う。

「その後も24年6月に『TUMO]』本部とフランチャイズ契約の調印、そして1年ほどで『Gメッセ群馬』の4階フロア全面改修を終えて25年7月にオープンですから。山本知事の強いリーダーシップなしにはこんなにスピーディに『TUMO』開業にこぎつけることはできなかったと思います」

「TUMO」の総建設費は3億9千万円、年間の運営コストは2億5千万円にもなる。地方自治体としてはかなり大きなプロジェクトと言えるだろう。

山本一太知事(本人Xより)
山本一太知事(本人Xより)
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そこいらの自治体なら膨大な税金投入に見合ったリターンの説明や利害関係者の調整に手間取り、途中で頓挫してもおかしくはない。

「『TUMO』は群馬県の将来を見据すえた長期投資と考えています。この取り組みを通じて、デジタルクリエイティブ分野で活躍できる人材を多く育てていければ、「群馬に行けば、貴重なクリエイティブ人材が確保できる」と企業が注目し、進出してくる。その結果として、雇用が生まれ、新たな産業の創出にもつながると期待しています」

オープンからまだ2か月ほど。すでに「TUMO」には多くの民間企業や自治体からの視察リクエストが殺到しているという。群馬がデジタルクリエィティブビジネスの日本版シリコンバレーと呼ばれるようになる日はそう遠くないのかもしれない。「TUMO」が地方創生に光を与える存在であることはまちがいない。

#2では地方創生の「影」の部分をお届けする。

取材・文/集英社オンライン編集部