単純な「給料アップ」ではない

現在、同社の奨学金返還支援(代理返還)制度の利用者は6名だが、すでに返済を完了した1名を含めると、これまでの利用者は7名となる。

「当社では月額1万5000円、総額で最大180万円を上限に、最長10年間、奨学金を完済するまで代理返還を行います」(人見氏)

当然ながら、返済額は人によって異なるが、代理返還の金額は全員一律で月額1万5000円。たとえば、月々1万8000円を返済している社員であれば、差額の3000円は自分で返済することになる。

18,000円の奨学金を返済する場合(編集部にて作成)
18,000円の奨学金を返済する場合(編集部にて作成)

「特に20代〜30代の社員は、結婚や子育てといったライフイベントがある世代です。そのような中で、たとえ月々最大1万5000円の支援であっても、『とても助かる』との声が寄せられています」(人見氏)

しかし、例えば社内で「奨学金を借りている者たちだけが優遇されていてズルい」という声はあがっていないのだろうか? いくら奨学金を借りている人たちが「毎月1万5000円を多めにもらっている」といった不満が、奨学金を借りてこなかった社員からあがることは十分に考えられる。

結論から言うと、代理返還に充てられるため、単純な給料アップにはつながらない。同社でも、特にそのような声はなかったという。

ただその一方で、「会社の利益を奨学金の返済に充てるなんて……」という批判的な意見も、SNSなどでは散見される。その点に関して、人見氏はこう語る。

「企業としての利益の使い道は、会社の裁量に委ねられる部分です。事業継続のために必要な機械装置の購入など、さまざまな投資がありますが、奨学金の返還支援も事業継続の一環であると考えています。そのため、特別な支出というわけではなく、当然のこととして行なっているものであり、批判されるような支出ではないと認識しています」(人見氏)