「褒める」を躊躇するのは損でしかない

アプローチのトークは、いわゆる「雑談」です。

経済新聞を読み込み、ネットニュースをくまなくチェックし、お客さまの事前情報で完全武装し、この雑談に臨む人もいるでしょう。

けれども、今、あなたが相手にすべきことは、心地良さを感じてもらうことなのですから、まずは、お客さまを褒めることに集中します。

「初対面で何を褒めたらいい? やはり、経歴や業績など事前データが必要なのでは?」そうした心配は無用です。

目についたものを何でもいいから褒めてあげましょう。

・入口のお花、きれいですね。いつも飾られているのですか?
・そのメガネ素敵ですね。いかにも仕事できそうな印象を受けましたよ。
・今、事務所の中を案内されたのですが、社員の皆さんが挨拶してくださり、とても気持ちが良かったですよ。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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相手を褒めることで、相手からも好かれることは、「営業マンのバイブル」と高く評価されている『影響力の武器』(チャルディーニ博士著)にも書かれています。人が相手に好意を抱く理由には次の3つがあります。

・自分に似ている。
・自分を褒めてくれる。
・同じゴールを目指す仲間である。

このように「褒める」ことの有効性は確かなものなのですが、営業さんの中には「褒めるのは、お世辞っぽく思われないかな」「逆に信用されないのでは」と敬遠する方もたくさんいます。でもその躊躇は大きな間違いです。

その「褒め」が「お世辞」であることは、お客さまも百も承知のことなのです。心理学では、人はお世辞と分かっていても絶対に喜ぶことが証明されています。脳は褒められれば幸福ホルモンを作り、人は快楽や幸せを感じて心地良くなるからです。つまり、お世辞でもいいのです。どんどん褒めることに得はあっても損はありません。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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「お会いしたばかりですが、○○さんがとても誠実な方だということが、よく分かります。私がこれまでお会いした中で、一番素敵な方ですよ」

初対面でここまで言われたら、むしろお世辞以外の何ものでもありません。けれどもお客さまは「いやいや」と言いながら、絶対顔は緩んでいます。試しに近くの同僚に言ってみてください。その効果が確認できるはずです。

初対面の人はいきなり褒められたら必ず「そんなことないですよ」と謙遜されます。そこで終わってはいけません。

1回褒めて、「さて本題ですが」では、せっかくの心地良さも一瞬で消えてしまいます。引かずに再度褒める。必ず2度褒めることが必要です。