だから与党の国会議員が頑なに減税を拒否する 

したがって、現状の税制改正のスケジュール下では、政治家側が主導権を発揮して国の在り方を決める基幹税に関する抜本的な税制改正などを行うことは難しい。

それどころか、税制改正の年間スケジュールにおいて、基幹税の税率自体を引き下げる議論を行う機会など実質的に存在していないと言っても良い。

この予算や税制のスケジュールを踏まえれば、与党の国会議員が頑なに減税を拒否する謎も解明できる。国会議員が実際に税制に関与できる時期(10月~12月)は、財務省によって予算・税制がほぼ取りまとめられた後の話でしかない。

国会議員ができることは、その後に行われる各省や業界団体の要望の再査定だけである。もちろん、各省や業界団体にとっては、与党税制調査会で要望が認められるかは死活問題であるが、大多数の国民生活を左右するような税制自体の大幅な見直しなどが行われることはほぼない。

つまり、国会議員には税制全体を左右する議論を行う場すら与えられていないのだ。

<動きだした新税>だから政府はこれからも増税する…選挙で負けても「全ては財務省の手のひらの上」野党も本気じゃない! 国民だけが被害者の茶番劇 _2

「全ての予算は決まっているために削れる予算は存在しない」 

そのため、昨年末のように与党税制調査会が開催されている段階で、野党が「減税」を税制改正法案にねじ込もうとしても、与党議員からは「全ての予算は決まっているために削れる予算は存在しない」「野党は財源も示さずに無責任だ」という発言が出てくることになる。

政治家が予算を決めるのだからおかしな発言だと思うが、予算・税制のスケジュールに鑑みれば、彼らの発言の意味を理解することができる。つまり、彼らは「財務省が決めた内容を大幅に変更するようなことはできない」と告白しているに過ぎないのだ。

極めつきは、税制全体を考えることを放棄した思考停止している国会議員の口にする税収中立という考え方だ。

税収中立とは「何かを減税するなら、その分増税して帳尻を合わせる」という考え方である。ただし、この考え方はあくまでも政治家には税制の微修正しかできない、という前提に基づく考え方でしかない。

ところが、現場の実態としては、この税収中立を声高に主張する国会議員らが存在することで、税制全体の在り方などを議論できず、税制論議が技術的な足し算引き算の些末な議論に矮小化する有様となっている。実に嘆かわしい状況だ。