聖地移住は自分の「好き」を中心に人生を設計すること

――千葉さんが『アニメ聖地移住』に込めた思いを教えてください。

聖地移住が地域に及ぼす影響について言及しましたが、地域活性化のために聖地移住があるのではありません。聖地移住が結果的に地域活性化につながっているんです。

これまで多くの聖地移住者にインタビューしてきました。確かに起業を目指したり、クリエイティブ産業や地場産業に携わり地域活性化に貢献している方もいますが、普通に会社勤めをしてファン活動を楽しんでいる方が大半です。

先に述べた通り、聖地移住は自分の「好き」を中心に人生を設計することで、つまり自身のウェルビーイングのためにすることです。

かつて地方創生は、自治体が「量」に偏重した、つまり「地域に骨を埋めてくれる覚悟を持った人に来てほしい」と求めるあまり、「地方に興味があるけど、いきなり移住はハードルが高い」と感じる人々にプレッシャーをかけて失敗しました。

今度は「質」にこだわるあまり、「(定住までしなくても)地域で活躍してくれる能力とやる気のある人に来てほしい」と再び人々にプレッシャーをかけているのではないかと危惧しています。

何も特別なことができなければ移住してはいけないわけではありませんし、受け入れる側も過剰な期待をするのはどうかなとも思います。聖地移住で、人々のウェルビーイングを達成して、結果として地域にもプラスの効果が出た。そんなウィンウィンの関係を目指すものであってほしいと思います。

アニメ聖地移住
千葉 郁太郎
アニメ聖地移住
2025/8/7
1,166円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4797681611

恋した“聖地”で生きること。
“聖地巡礼” から “聖地移住” へ。

2016年にヒットした映画『君の名は。』以降、アニメの舞台になった場所を巡るアニメ“聖地巡礼”は社会に広く知られるようになり、“聖地巡礼”はファンによる活動の一ジャンルとして定着した。
さらに近年、巡礼にとどまらず、その土地の魅力に惹かれて移住する人が増えている。この“聖地移住”が、現代人のライフスタイルや地域再生においてどのような意味をもつのか、その実態に迫る。

【序章より抜粋】
「好き」を中心に生活を設計しませんか、というのが私からの提案です。「好き」の内容がスポーツだろうと農作業だろうとアニメだろうと、そこに優劣はありません。アニメ「好き」を貫き通して住む場所を選び、生活することを決意した人たちを複数取材しましたが、その中で見えてきた幸福のあり方を考えたいと思います。

【目次より抜粋】
序章 恋した「聖地」で生きること
第1章 ライフスタイルとしての「アニメ聖地移住」
第2章 時代はアニメ聖地巡礼から「アニメ聖地移住」へ
第3章 コミュニティ再生と「アニメ聖地移住」
第4章 「アニメ聖地移住」を実現したひとびと
第5章 「アニメ聖地移住」を通して見えた課題と処方
付録 『ラブライブ!サンシャイン!!』の聖地・沼津市の挑戦

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