人生観を180度変えたアニメ作品との出会い
――千葉さん自身も聖地にお住まいですね。
私が聖地移住を研究するきっかけになったのは、聖地移住者にシンパシーを感じたからです。私は大学進学で初めて京都に住んで、就職で一旦京都を離れました。
退職後、公認会計士の試験勉強のために京都に戻って来て、試験に合格したら東京の監査法人に勤めるつもりでした。
当時、作家・真山仁さんの「ハゲタカ」シリーズが大好きだったので、「自分も日本経済の中心地でビッグディールをするんだ!」と分不相応な野望を抱いていました。
考えが180度変わったのは2013年テレビ放映のアニメで、京都を舞台にした『たまこまーけっと』と『有頂天家族』に出会ってからです。それ以前からもアニメや聖地巡礼は好きだったのですが、この二つの作品に出会って聖地巡礼や京都という街との向き合い方が変わりました。
その後、東京と大阪の事務所から内定をいただきましたが、迷うことなく京都住まいを続けられる大阪の事務所を選びました。
ですから、私の場合、正確には移住というわけではありませんが、アニメがきっかけで住むところを決めて、仕事もそれに合わせたという点では聖地移住を実現した人々と通ずるところがあると思っています。
『有頂天家族』は作家・森見登美彦さんの小説が原作なのですが、作中登場する「面白きことは良きことなり」という言葉は私の信条そのものです。好きなこと、面白いことに全力を傾けることは失うものがあるかもしれませんが、振り返ってみると満足感の方が大きいです。