武器輸出の是非は
日本には1967年の佐藤内閣の国会答弁での原則「武器輸出三原則」があり、今まで共産圏諸国や紛争当事国などに武器(兵器)、製造技術、転用可能な物品の輸出は原則禁じられてきた。
時代は流れ、この「三原則」は、安全保障環境に適合させるべく第2次安倍政権の2014年に「防衛装備移転三原則」という名称に変わり、日本の安全保障に役立つ条件を満たせば、上記の当事国以外は輸出や共同開発を認めるようにした。
完成装備品は運用指針として「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」、および「共同開発」であれば輸出可能になったのである。今回のオーストラリアへ輸出する「もがみ能力向上型」はこの「共同開発」という範疇に入る。
ここで世界各国の防衛予算と武器輸出の関係を考えてみたい。
右肩上がりの世界の軍事費を比較すると、言うまでもなく米露中の軍事大国が1、2、3位を占めるが、日本は第10位の約553億ドル(日本円で約8兆7000億円)、同じような規模として第9位は約646億ドルのフランスだ。
興味深いのはそのフランスが、戦闘機や空母、潜水艦、ミサイルといった必要な武器システムを自国の防衛産業で開発・製造して生産能力を高め、国家として戦略的に自立していることだ。
そのために重要なのは外貨獲得であり、世界中に多角的にセールスをかけ武器輸出で年間受注額として約3兆円を稼いでいる。
同国のルコルニュ国防相は「フランスにとって武器輸出は、主権の前提条件で防衛産業や技術基盤を発展させ、防衛収支や雇用創出に不可欠だ」と言い切っている。
さらに仏防衛産業界にも「納税者の金を目当てにするな。リスクを取れ」と発破をかけている。これはマクロン大統領も同じ考えだ。
もちろんフランスのモデルケースがすべて我が国にあてはまるわけではないが、世界情勢が緊迫し、大国の「力こそ正義」と言わんばかりの“横暴さ”が世の中に蔓延している以上、我が国も自立していくために覚悟を持って今後の防衛指針を、外貨獲得も含め考慮しなければならないだろう。
対中国向けに日本のフリゲート導入か
今回のオーストラリアの日本のフリゲート導入の背景には、中国の海洋進出がどんどん南下し、かなりの脅威になっていることがある。
太平洋のソロモン諸島やパプアニューギニアなどの国々が親中派になり、オーストラリアの北側まで中国が進出し、次々と拠点をつくっている。
これは自国防衛のために東シナ海で中国と対峙する日本と置かれた状況は同じである。ここで日豪が強いタッグを組まないと太平洋で取り返しのつかない事態が生じるだろう。
皮肉なことに中国は研究に研究を重ね、日本の太平洋戦争から戦略を学んでいるとされる。だとすれば戦時中、ガダルカナル島をめぐるソロモン海戦で、かつては艦隊決戦を繰り広げた日vs豪(連合軍)が、今度は同盟国として同じ艦で構成された艦隊で、中国の南下を“阻止”するというのは歴史的に見ても因果を感じる。
今回のフリゲート輸出は単なる武器輸出ビジネスではなく、同じ価値観を持つ日豪の、互いの国家の自立をかけた戦略であることは間違いない。
文/世良光弘