「もがみ能力向上型」の実力
では、どんな船が誕生するのか? 海自では現在の「もがみ」型(FFM)12隻に加え、「もがみ能力向上型」(新型FFM)は23隻建造予定。この工程の中からオーストラリア向けの艦を建造する。
今年5月、シンガポールで開かれた海軍装備の展示会「IMDEX Asia 2025」では世界中の海軍関係者の前で、各国のメーカーが実際の艦艇と艦載装備品を披露した。海上自衛隊も昨年就航したばかりの護衛艦「やはぎ」を寄港させ、「もがみ型」5番艦としてPR。
その現場を取材したカメラマンの布留川司氏がこうコメントする。
「『やはぎ』はレーダーに見えにくいステルス性を考慮して、全体がフラットな特徴的な外見をしています。その見た目から現地では注目を集めていたようですね。
また『やはぎ』は5500トンですが、『もがみ能力向上型』は排水量が増え約6200トン(満載時)となります。全長も133mから142mに拡大されるのでオーストラリア海軍のものもこれに準拠します。
兵装は新型になり従来の倍のMk41 VLS(縦型発射装置)32セルを搭載し、海上自衛隊では国産のミサイルを搭載予定ですが、コンロイ国防産業相はトマホーク巡航ミサイルの運用を示唆するコメントをしています。
推進・操艦はCODAG(ガスタービン+2基のディーゼル機関)方式で30ノット以上の高速航行が可能。航続距離は約1万海里(1海里は1.852km)となります。人員効率は高度な自動化により、必要乗員は約90名。豪海軍現行のアンザック級(約120名)より少なく、人員削減はあちらにとっても重要なポイントだといえます。
多目的性が重視され対潜・対空・対水上などオールラウンドに対応できる艦ですが、オーストラリアへの輸出では、相手国の独自の要件(通信・電子戦装備、異なる兵器への対応)への対応が焦点となっていくでしょう」
このように今回の日本の国産新型フリゲート輸出は、あくまでも「オーストラリアとの共同開発」という形をとっている点だ。