裁判ではすべての状況や証拠が、客観的かつ総合的に判断される
さらに実用的な話をしておきたい。
不貞行為の認定において、裁判実務は決して「強い証拠の有無」だけで決まるという単純なものではない。もちろんラブホテルの出入りなどの強い証拠であれば「一撃KO」も可能だけど、裁判ではすべての状況や証拠が、あくまで客観的かつ総合的に判断される。
「弱い証拠は使えない」とは書いたが、それはあくまで「単体」での話。弱い証拠であっても、ほかの証拠と組み合わせることで有効性が高くなるケースもある。つまり、仮に強い証拠を押さえることができなかったとしても、直ちに負けというわけでは決してない。
離婚調停や離婚裁判は、ある意味で「ボクシング」に似ているかもしれない。実際の法廷では、強い証拠がなくとも、弱い証拠を複数積み上げることで勝ちにつながることがある。たとえ証拠一つひとつが間接的で弱いものであっても、それらを複合的に見てストーリーに整合性があれば、肉体関係の存在を推認させるに足る主張が成立する。一撃KOが無理でも、細かなポイントを重ねて判定勝ちに持ち込む――まさに、そんなイメージだ。
だからこそ、探偵に依頼して強い証拠を狙いつつも、あなた自身も日常生活において、小さな証拠を集め続ける努力が必要不可欠となる。
優秀な探偵に依頼したら、「はい、これでもう安心」というわけにはいかない。
探偵はあくまでも手助けをする伏兵であって、戦の主役、つまり総大将はあなた自身。
離婚調停や訴訟の成果は、次の掛け算で決まるといっても過言ではない。
・離婚調停の成果=依頼者の頑張り×弁護士の能力×探偵の能力
要するに、探偵や弁護士がいくら優秀でも、依頼者自身が途中で旗を折ってしまえば意味がない。また、探偵が証拠を何もつかめなければ、優秀な弁護士でも戦えない。さらに、探偵が強力な証拠を撮ってきても、それを活かせない弁護士では成果が薄れる。
離婚調停はボクシングに似ていると言ったけど、同時に「自分自身との戦い」でもある。
依頼者が自身の傷ついた心に打ち勝たないかぎり、この戦いで勝利をつかむことはできない。
文/探偵小沢