裁判ではすべての状況や証拠が、客観的かつ総合的に判断される 

さらに実用的な話をしておきたい。

不貞行為の認定において、裁判実務は決して「強い証拠の有無」だけで決まるという単純なものではない。もちろんラブホテルの出入りなどの強い証拠であれば「一撃KO」も可能だけど、裁判ではすべての状況や証拠が、あくまで客観的かつ総合的に判断される。

「弱い証拠は使えない」とは書いたが、それはあくまで「単体」での話。弱い証拠であっても、ほかの証拠と組み合わせることで有効性が高くなるケースもある。つまり、仮に強い証拠を押さえることができなかったとしても、直ちに負けというわけでは決してない。

離婚調停や離婚裁判は、ある意味で「ボクシング」に似ているかもしれない。実際の法廷では、強い証拠がなくとも、弱い証拠を複数積み上げることで勝ちにつながることがある。たとえ証拠一つひとつが間接的で弱いものであっても、それらを複合的に見てストーリーに整合性があれば、肉体関係の存在を推認させるに足る主張が成立する。一撃KOが無理でも、細かなポイントを重ねて判定勝ちに持ち込む――まさに、そんなイメージだ。

画像はイメージです(写真/Shutterstock)
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だからこそ、探偵に依頼して強い証拠を狙いつつも、あなた自身も日常生活において、小さな証拠を集め続ける努力が必要不可欠となる。

優秀な探偵に依頼したら、「はい、これでもう安心」というわけにはいかない。

探偵はあくまでも手助けをする伏兵であって、戦の主役、つまり総大将はあなた自身。

離婚調停や訴訟の成果は、次の掛け算で決まるといっても過言ではない。

・離婚調停の成果=依頼者の頑張り×弁護士の能力×探偵の能力

要するに、探偵や弁護士がいくら優秀でも、依頼者自身が途中で旗を折ってしまえば意味がない。また、探偵が証拠を何もつかめなければ、優秀な弁護士でも戦えない。さらに、探偵が強力な証拠を撮ってきても、それを活かせない弁護士では成果が薄れる。

離婚調停はボクシングに似ていると言ったけど、同時に「自分自身との戦い」でもある。

依頼者が自身の傷ついた心に打ち勝たないかぎり、この戦いで勝利をつかむことはできない。

文/探偵小沢

『事件はラブホで起きている 秘密の「浮気」調査報告書』二見書房
探偵小沢
探偵小沢『事件はラブホで起きている 秘密の「浮気」調査報告書』二見書房
2025/7/2
1760円(税込)
320ページ
ISBN: 978-4576250533
「他人のセックスを証明することで生活をしている社会不適合者」をキャッチコピーに新卒から探偵となった現役私立探偵「探偵小沢」。小学生の頃の趣味は「買い物をする友だちのお母さんの尾行」というように、ナチュラルボーンな探偵。手がけた浮気調査は1000件以上。見かけとは裏腹に、丁寧な調査と依頼者さんに寄り添ったホスピタリティの高さが評判を呼び、日々調査依頼が舞い込む超売れっ子探偵。 そんな探偵小沢が遭遇した数々の浮気調査現場のレポートから、「もしパートーナーが浮気した場合の対処法」「悪徳探偵の見分け方」「探偵のと~っても有効な使い方」「弁護士の相談方法」など、「浮気」というキーワードに「ピン」とくる世の皆様方には必携の書。
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