いまにも抱き合ってしまいそうな二人のやりとり
とくに二人の急接近ぶりが露呈したのが「企業・団体献金」だ。野田氏が「落としどころを一緒に協議したい」と秋波を送れば、石破氏は「そのようにしたい。第一党と第二党で議論することに意味がある」と歩調を合わせた。
立憲民主党は、企業・団体献金の廃止を掲げていた。自民党は存続に強いこだわりを見せてきた。まさに「水と油」だった。
野田氏はこの日、廃止ではなく、公明党や国民民主党が求めている「禁止ではなく規制強化」に譲歩して石破総理にこう呼びかけた。
「総理と私は1993~94年の政治改革の議論を知る世代だ。責任もある。もう実務者だけに任せるのではなく、私とひざ突き合わせて協議し、合意する気はないか」と問いかけた。
石破総理は我が意を得たり、といった表情でこう返答した。
「その通りにしたい」
これが与党第一党と野党第一党の党首同士の国会論戦といえるのだろうか?
字面だけ追うと、いまにも抱き合ってしまいそうな二人のやりとりだ。何の迷いもなく応える石破総理の姿には事前に野田氏との間で入念に打ち合わせていたと感じさせるようなやりとりだった。
当選同期で同じ年の二人。ともに新進党という同じ政党に所属していた時代もある。まるで石破総理の後援会長のように振る舞う野党第一党の党首に、ある立憲関係者が先日、面と向かって不満をぶつけたという。
それに対する野田氏の返答の趣旨はこうだった。
いま解散総選挙になったら日本中がオレンジ色に染まる
躍進した参政党や自民の高市氏を念頭に「今の日本政治は右のポピュリズムが強すぎる。核武装は安上がりだなんていう政党が広島でも我々より得票した。だからといって自民の右側に近づいても意味がない。我々と親和性のある人がいる間に我々の政策を前に進めたい」
つまり、野田氏的には財政積極派が次の総理や総裁になるくらいなら石破総理のままでいい、ということなのだろう。今回の参院選では党勢をはかるバロメーターと言われる比例票では、立憲民主党は国民民主党や参政党に負けて野党第三党となった。。
ある立憲の中堅議員は「いま解散総選挙になったら日本中がオレンジ色に染まる。立憲は消えてしまう。だから政策や思想が近い石破総理を支援する方向に舵を切ったのだろう。野田さんは4日の国会答弁でルビコン川を渡ってしまった」と嘆く。
いま内閣不信案を出して衆院解散に持ち込んでも立憲民主党の惨敗は目に見えている。だから、石破総理支援に舵を切ったのだろう。