20代でのがん経験も「別に特別じゃない」

──本業の歌以外にも、以前から水着の仕事をたびたびされています。手術の前後で魅せ方などは変わりましたか?

前だったら胸を強調するようなポーズもしたかもしれないですけど、もうそういうのはしないですね。最初の全摘出は小さな痕だったんですけど、6月の再発手術の痕は水着から出ちゃうような位置だったので。

2018年夏、手術前に出演した水着撮影会の1枚(写真/本人提供)
2018年夏、手術前に出演した水着撮影会の1枚(写真/本人提供)

これは結構ショックもありましたし、手術前から決まっていた先日の撮影会も、ビキニの予定を変更して違う水着を着ました。

でも、もともと巨乳自慢とかじゃなく“くびれが自慢”みたいな感じで腹筋も鍛えてたので、前以上にそっちをおしていこうと!

術後1ヶ月の水着撮影会も元気に出演した(本人Xより)
術後1ヶ月の水着撮影会も元気に出演した(本人Xより)

──そこも前向き変換とはさすがです…! もとからポジティブな性格なのでしょうか?

私、2年前の手術を公表したときもほとんど泣かず、ファンの方に「めっちゃメンタル強いね」「がんだなんて見えなかった」ってすごく言われたんですよ。

でも実際は、そうすることで自分を守っていたというか。ちょっとでも不安を漏らしたら、もう何もしゃべれなくなると思って。

先日の水着撮影会ではMVPにも輝いた(本人Xより)
先日の水着撮影会ではMVPにも輝いた(本人Xより)

不安の見せ方もわからないというか、手放しに心配されて励ましてもらうみたいなのが得意じゃなくて、見せないほうが自分にとって楽なんです。

そもそも、“がん”って聞くと重い感じがするだけで、自分の病気は別に特別じゃないとずっと思ってるんです。

──特別じゃないといいますと?

がんを公表してから、「自分もこういう病気で~」「自分も通院してて」と教えてくれるファンの方が結構たくさん出たんですよ。

それを聞いたら、「みんな言わないだけで、大なり小なり、いろんな事情のなかでそれぞれ闘ってるんだな」というのを、前以上に感じるようになりました。

ライブ中の市ノ瀬律さん(写真/本人提供)
ライブ中の市ノ瀬律さん(写真/本人提供)

 ──なんだか感激しました。最後に、今後目指すものを教えてください。

私だからこそできる表現があると思ってます。20代半ばで乳がんが見つかり、術後2年で再発、今後も治療の副作用や再発の不安もありますが、この感情や経験も武器にステージに立ち続けたいです。

人の心に響くような表現者になり、同じように何かと闘っている人に寄り添えるようなパフォーマンスを届けたいですね。

たまに「乳がんについての啓発をしてください」という声もいただくので、私でよければぜひ。それをきっかけに、グループのことをもっと知ってくれたら嬉しいです。

最後に…… 間違いなく検査は早めにやったほうがいいです。私なんかでも、そういうきっかけになればと思います。

取材・文/久保慎