「秘密兵器」はインソール!?

加えて、そういった意識改革と並行して着手したのが、“足まわり”のアップデートだ。

ひょんなことからその重要性に気づいた指揮官は、ふだん見落とされがちなスパイクのインソールを一新。靴ひもの結び方にまで、専門家の知見を取り入れた。

「あるとき、小学校からの幼馴染みが作っているインソールを履いて、ゴルフのラウンドを回ったら、まったく意識はしていなかったのに、疲れ方がいつもとまったく違ったんですね。で、それをさっそく選手たちにも履かせてみたら、“足がちゃんと止まる”、“踏ん張りが利く”と好評で。全体的な身体のバランスもよくなり、目に見えて効果が出たんです」

それまでは、使う用具も基本的には選手任せ。インソールはおろか、スパイクのサイズもマチマチで、なかには「3、4センチ大きいのを履いている子もいた」という。

それを「姿勢は足元から」と刷新するや、疲労軽減・怪我の減少はもちろん、飛距離や球速、走塁の向上にまで繋がったというから、インソールも「ただの中敷きでしょ?」と侮れない。

「投手のなかには一気に5キロ、10キロと球速を上げる子も出てきたくらい。大阪大会の7試合で9盗塁を決めた上田(こうだ)留生を筆頭に、機動力を活かせる場面も想像以上に増えました。肉離れや捻挫といった怪我をする子もいまのところはいませんし、スパイクのなかでしっかり足が固定されるってことがどれほど大事かってことを、あらためて実感しましたよね」

ちなみに、同校のシューズフィッティングを担当した『みらいアスリート研究所』は、岡山を拠点にアスリート向けのセミナーなどを手がける一般社団法人。

この3月、春季大会の直前から週1ペースでスタートした指導がこんなにも早く結果に結びつくとは、「野球部の指導は初めて」という専門家をもってしても驚きだったに違いない。

「靴ひもひとつにも、力の入る結び方、抜ける結び方ってあるんですよ。それを選手たちにもわかる言葉で丁寧に教えてもらえたのは、本当によかったですね。インソールと靴ひもの結び方。些細なことのようですけど、これまでとの物理的な違いという部分でも、僕らにとってはこの2つが、この夏の“秘密兵器”だったと言えるかもしれません」

アスリート向けに開発された「フライングディスタンス社製」のインソール
アスリート向けに開発された「フライングディスタンス社製」のインソール