さや氏「色々あって今度は参政党から出ることになりました」

水島氏は約3年の時間を置き、同じ内容の証言をよどみなく語った。では本当にさや氏は国民民主党からの出馬を準備したのか。

確認を求めると国民民主党は榛葉賀津也幹事長名で「他党に所属する現職国会議員に関するご質問については、他党に関わることですのでお答えすることは差し控えたいと存じます。なお、塩入氏を弊党にて公認した事実はございません。」と回答した。

いっぽう、さや氏に参政党事務局を通じて文書で質問を送ったところ、2022年の参議院選で「国民民主党より公認を頂き出馬予定でした。」と回答してきた。両者の言い分は正反対だ。

当時、全国比例候補の公認を得ていたとするさや氏は、回答書でその経緯をこう説明した。

〈2021年頃より国政に携わりたいとの思いがあり、国民民主党の一般公募から申し込みをし、試験を受け、面接、その後公認を頂きました。しかしながら長年出演させて頂いていた放送局(チャンネル桜)のプロデューサーの方に会社の存続に関わるので出馬を断念するよう説得され、出馬を断念致しました。〉

7月19日、芝公園でのマイク納めで話す参政党の神谷宗幣代表とさや氏(撮影/集英社オンライン)
7月19日、芝公園でのマイク納めで話す参政党の神谷宗幣代表とさや氏(撮影/集英社オンライン)

国民民主党を選んだ理由をさや氏は詳細には述べていないが、水島氏は2022年8月に「(国民民主党が)経済政策を半年前ぐらいに転換したんですよ。いわゆる財政均衡論から。これは三橋さんの影響かもわかんないけどね」と推測している。

たしかにその約半年前の2021年10月1日、国民民主党は、

〈経済政策を積極財政に転換します。需要が供給を上回る状態にすることで消費や投資を活性化し、労働需給が好転して健全に賃金が上昇する「高圧経済」を実現します〉

と正式に宣言。さや氏を「愛弟子」と呼び影響力を誇示する三橋氏は今回の参院選でのさや氏の応援演説で、「赤字国債というのは政府にとっての赤字です。実は政府の国債発行というのは皆さんにとっての黒字なんです」という主流とは反する考えを訴える積極財政論者だ。

だが新党くにもりも「政府の赤字はみんなの黒字」とする積極財政派だ。さや氏は「核武装が最も安上がり」とも発言しているが、これも「正直な核武装論議を」と基本政策に書く新党くにもりの考えに近い。

7月13日、成増駅前で演説するさや氏と抗議のプラカード(撮影/集英社オンライン)
7月13日、成増駅前で演説するさや氏と抗議のプラカード(撮影/集英社オンライン)
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その新党くにもりよりも国民民主党を選んださや氏は、やはり「当選の可能性」を重視したのだろうか。そして挫折から3年を経て今度は参政党の候補として有権者の前に立つに至った経緯をさや氏はこう説明する。

〈2024 年12月に行われたCPAC JAPAN (※保守派の国際政治会議)の会場で玉木代表にお会いした際に前回の参院選の際、公認を頂いたにも関わらず出馬できなかった旨の謝罪をし、私の方から2025年参院選に向けて勉強している旨をPRさせて頂いた経緯はございました。しかしその後は特に連絡を取り合っておりません。

昨年7月の東京都知事選挙に尊敬する田母神俊雄さんが出馬され応援演説に伺っていた際、(参政党の)神谷代表や吉川里奈議員の演説を隣で聞かせて頂いており、僭越ながら普段自 分自身が我が国について考えていることと深くリンクしていると感じました。

また昨年10月の衆院選の際、経済政策で深く共感している安藤裕さんが参政党から出馬され経済政策の面でもより一層参政党への信頼が深まりました。

今回の参院選挙では番組でご一緒している三橋貴明さん、山口敬之さんなどの推薦を頂き、神谷代表に出馬のお願いをさせていただきました。〉

参政党の内情を知る関係者が「彼女は選挙の直前に(参政党に)入ってきました」と話すさや氏は選挙戦で「参政党は私は一番マトモなことを言っていると思う。みんな日本人のことを本当に考えている政党です」と同党の政策をアピールしている。

では政策面で国民民主党よりも参政党を選んだ理由は何か。これにさや氏は、

〈国民民主党さんの「手取りを増やす」という政策は素晴らしいと思いますが、現時点の日本において控除額の引き上げはもちろんのこと、やはり最も大切なことは参政党の公約にある「消費税の廃止」(段階的)だと考えます。

消費税自体が持つ逆進性や、非正規雇用を助長する作用、輸出還付金としての作用、実質的には事業者が負担する第二法人税としての作用などが日本の衰退に大きく影響していると考えております。

また我が国は他の先進国に比べ根本的に国の財政出動の増やし方が足りておらず、日本経済を成長させていくためには「積極財政」が必要不可欠だと考えております。

また選択的夫婦別姓法案について明確に反対している参政党の方がより私自身の考え方に近いです。〉

と答えた。

水島氏によると、今回の参院選の前にもさや氏から連絡があり、「色々あって今度は参政党から出ることになりました」と言われ、「賛成はできないが頑張って」と伝えたという。

国民民主党の公認をめぐる同党とさや氏の言い分が正反対となっている理由は不明だが、さや氏は念願の国会議員の席を手に入れた。議員として何をするのか、本当に問われるのはこれからだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班