駅やその周辺の観光地を“ひとつなぎ”に!
本年7月2日から9月30日までは、「ONE PIECE新幹線 夏の大冒険!!キャンペーン」が開催中だ。抽選でオリジナルグッズが当たるデジタルスタンプラリーや、Xでの写真投稿キャンペーンを行っている。
さらに7月末頃からは、山陽新幹線全19駅を、『ONE PIECE』各篇の舞台になぞらえ、各駅に「ONE PIECE新幹線スペシャルゾーン」を設ける。オリジナルアートや、各駅の観光地を『ONE PIECE』の1シーンと名セリフで表現するなどにより『偉大なる線路(グランドレイル)』を盛り上げていくという。
つまり、「ONE PIECE新幹線」は、単に車両だけでなく、駅やその周辺の観光地とリンクさせ、山陽新幹線全体を盛り上げる企画なのだ。車両は、山陽新幹線の各駅に停車する列車「こだま」として走る。
先述の担当者によると、『ONE PIECE』の世界観の再現に注力したという。同作品のファンの期待に応えるため、集英社や東映アニメーションの監修を受け、原作の世界観に近づけたそうだ。
第1シリーズ「せとうちブルー号」は、大阪・関西万博の開幕日(4月13日)の前日にデビューした。その日は土曜日だったこともあり、新大阪駅のホームには大勢の人が集まり、列車を出迎えた。
大阪駅前に現れたパブリックアート
そしてJR西日本と集英社関係の漫画家がコラボしたのは「ONE PIECE新幹線」だけではない。昨年にはパブリックアート「THE FOUNTAIN BOY」を誕生させた実績がある。
これは、大阪駅にかつて存在した「噴水小僧」をモチーフにしたステンドグラス作品で、荒木飛呂彦氏が制作した。荒木氏は、週刊少年ジャンプやウルトラジャンプで『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズを連載してきた人気漫画家だ。
「THE FOUNTAIN BOY」は、JR大阪駅西口にある。この作品は、大阪駅と直結する高層ビル「イノゲート大阪」を中心としたアートプロジェクト「WARP(ワープ)」の作品群の一つだ。同ビルは、大阪駅西側の再開発によって2024年7月31日に開業した。現在、JR西日本のグループ企業(JR西日本ステーションシティ)がこのビルを運営している。
JR西日本の担当者に聞くと、「ONE PIECE新幹線」は鉄道の利用促進、「THE FOUNTAIN BOY」は大阪の文化やビジネスの発展、イノベーションの創出を目的としているそうだ。
同社は、一見鉄道とは縁遠そうなコミックスやアニメなどのコンテンツとのコラボを試みた。このことは、“鉄道×エンタメ”の相乗効果で新たな価値を生み出したユニークな例だと言えるだろう。
取材・文/川辺謙一