〈前編〉 

生きづらかったのは、あなたのせいではない 

ある日、佐野靖彦さん(63)が向かったのは区役所だ。双子の兄に生活保護の申請を勧められたのだ。

幼いころ祖母に引き取られた兄とは別々に育てられ、佐野さんが兄と初めて会ったのは小学6年生のとき。兄は大学を中退して関東の生協で働いていたが、うつ病を患い、生活保護を受給していた。ちなみに弟は生後すぐにアメリカに養子に出され、生死すらわからない。

佐野靖彦さん
佐野靖彦さん
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佐野さんは怯えながら窓口を訪れた。兄からは「議員と一緒に行け」とアドバイスされたが、地元の区議に断られてしまい、泣く泣く1人で行ったのだ。