費やしたお金は約2000万円、それでも諦めない
先の見えないトンネルの中で、光明も差している。
4年間は独学でがんばってきた医師国家試験だが、去年度は費用を捻出してビデオ講座を受講して試験に臨んだ。その結果、合格まであと一歩まで迫ったのだ。
さらに、ありがたいことに旧友が勉強に集中できるようにと、いろいろとサポートしてくれている。
彼の歩みを止めさせたのが人間関係ならば、医者の道を後押ししてくれるのもまた、人間関係だったのだ。
医師を目指して30年、費やした学費や授業料は総額2000万円にもなるという。たとえ、医師国家試験に合格しても、その後、アラフィフのジンジンさんを研修医として迎え入れてくれる病院があるかどうかすらわからない。
Xでは応援してくれる人がいる一方、「もう諦めろ」「適性のない医者に診てもらいたくない」といった辛辣なコメントも少なくない。
そんな言葉を受けてもジンジンさんは「決めるのは病院。私はただ、がんばるのみ」「諦めかけている人のそばに立てる医者になりたい」と前を向く。
将来、こんな経歴を持つジンジンに救われる患者もいるかもしれない。五十にして天命を知るために、ジンジンさんは今日も机に向かう。
と、なんだかいい話風になってしまったが、「医者になれば少しはモテるかもしれないですしね」と鼻の下を伸ばしていたジンジンさんがいたことも、念のため付け加えておく。
取材・文/武松佑季