高齢の親を持つ世代「聞き入れてくれない」

このように、自宅でエアコンを使わない高齢者はいまだ多く見受けられる。背景には体質や習慣、経済的な不安などさまざまな理由があるが、離れて暮らす家族にとっては、深刻な懸念材料だ。実際、そうした高齢の親を持つ30〜40代からは、心配の声が数多く寄せられている。

「母(67歳)は冷え性で、夜は扇風機しか使っていません。寝るときにエアコンを使わないので、正直すごく心配です。電話で何度も『エアコンつけてね』って言っているんですが、聞き入れてくれなくて…」(30代・女性)

「父(70歳)は寝るときに絶対エアコンをつけません。頑固な性格で、『つけろ』って口酸っぱく言っているんですけど…。こっそり遠隔操作したいと思うくらい、すごく心配です」(30代・男性)

「母(69歳)は『扇風機を回しているから大丈夫』って言うんですけど、高齢者って自覚のないまま脱水になることがあるじゃないですか。本当に不安です」(40代・女性)

エアコンをつけない親を心配する40代の女性2人組(写真/集英社オンライン)
エアコンをつけない親を心配する40代の女性2人組(写真/集英社オンライン)

「うちの母(72歳)は、去年から使い始めました。近所に熱中症で倒れた人がいたらしくて、『さすがに怖くなった』って言っていました」(30代・男性)

「私自身も電気代が気になってあまり使っていないのですが、離れて暮らす母(70歳)もエアコンはつけていません。母の世代は『エアコン=ぜいたく品』という意識が根強くて、説得するのがなかなか難しいですね」(40代・女性)

街頭インタビューを続けていると、約10年前に祖父を熱中症で亡くしたという40代の男性に出会った。「もっと強く言えばよかった」と語りながら、当時のエピソードを静かに振り返ってくれた。

「祖父が熱中症になったのは、30度を超えようかという8月の熱帯夜でした。部屋にはエアコンがあったのに、まったく使おうとしなかったんです。昔から『エアコンは身体によくない』と言っていて、夜もそのまま。家族は何度も『夜はつけたほうがいい』と伝えていたんですが、聞く耳を持ちませんでした。

祖父は家族と同居していましたが、誰が言っても『平気だ』の一点張りで。暑さに対する感覚も鈍っていたのか、『暑くない』ともよく言っていました。エアコンをつけないことで身体にどれだけ負担がかかっているか、自分ではまったく気づいていなかったと思います。

熱中症になった後、一人で歩けなくなるくらい衰弱して、うまく物が食べられなくなり、1か月後に誤嚥性肺炎で帰らぬ人となりました。

今思えば、もっと強く言っていればよかった。家族全員が後悔しています。言葉だけじゃなくて、無理やりにでもエアコンをつけてしまえばよかったのかもしれません。

今でも『エアコンは身体に悪い』と言って使わない高齢者は多いと思います。でも、今の夏は本当に危険です。エアコンを使わないほうが、むしろに身体に悪い。本人にも、そしてその周りの人にも、もっとその現実を伝えていくべきだと思います」(40代・男性)

巣鴨地蔵通商店街(写真/集英社オンライン)
巣鴨地蔵通商店街(写真/集英社オンライン)
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すでに連日、強い日差しと厳しい暑さが続いており、今年の夏も昨年同様、過酷な暑さが予想される。エアコンの使用をためらう高齢者が身近にいる場合は、その危険性を軽視せず、日頃から根気強く伝えていきたいところだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班