「ダイバーシティなら差別も自由なんじゃないかと思うようになった」 

映画の冒頭、君塚監督がインタビュアーとなって「ADHDについてどう思うか」という街頭インタビューするシーンがある。

街の声を拾うなかで、自分と彼女は“ADHD”だと自称するカップルが登場する。ADHDという言葉を診断名というより、一種の状態としてカジュアルに定義づける層が増えており、病気に対する認知度の広がりは感じるが、当事者の思いは違うのだろうか。

「病院では問診なので、忘れ物が多い子とかは、もしかしたらそうじゃないのにADHDと診断されやすいということもあるかもしれない。でも、本当に重症なADHDは働くことも難しいですからね。僕の知り合いはずっと施設にいますけど、そこで袋詰めの仕事をしてなんとか生計を立てています」

そんな君塚監督がこの映画で訴えたかったことは何なのだろう。

「いまダイバーシティの概念が根づきつつあり、理解が高まっていますけど、まだ差別的なものは残っていると思うんです。

僕も制作現場のスタッフに裏で“クレイジー”というあだ名で陰口を言われたりもしていますし。

もちろん、差別しない人もいますけど、ただ、差別することもある種の自由なんじゃないかなとは思うんです。もちろん腹は立ちますけど、要はそういう人と付き合わないで、理解してくれる人とだけ付き合っていけばいいわけですから」

誤送信されて自身が裏で“クレイジー”と呼ばれていることに気づく
誤送信されて自身が裏で“クレイジー”と呼ばれていることに気づく
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厚労省の?統計によると日本全国でADHDの人は300〜400万人、2010年以降は増加のペースにある。成人では全体の約2.5%がADHDを抱えているという。

「でも、変わってる人や、変なところがある人はどこにでもいると思うんです。今の風潮で“変はダメだ”と言っちゃうからおかしくなるわけで、変は変として、受け入れてくれればいいなと思っています。まあ、僕はこれまでいろんな人に迷惑をかけてしまったので自重するようになりました」

ADHD当事者によるこの異色作はどのように受け止められるのか。

取材・文・撮影/高田秀之

星より静かに

6月21日(土)より K’s cinemaほか全国順次公開

〈55歳ADHD映画監督〉スタッフから「クレイジー」と陰口を叩かれて…自分自身にNGを出しても描きたかった「生きづらさ」とは_6

監督・脚本・企画・出演:君塚匠
内浦純一 蜂丸明日香 三嶋健太 渡辺真起子/君塚匠 森重晃
脊尾昌壮 佐藤京子 山田雪子 柳瀬清美
秋庭秀紀 津曲久美子 野間憲治

エグゼクティブプロデューサー:森重晃 酒井政幸 
プロデューサー:君塚匠 アシスタントプロデューサー:池田恭子
音楽:福廣秀一朗 撮影監督:永石秀行 録音:樋口昴 編集:椿茂之
助監督:植田中 秋葉美希 制作:齋藤英文 富田裕子 宣伝デザイン:千葉健太郎 
医療監修:秋庭秀紀(ココカラメンタルクリニック鶴見) 
協力:にじ鶴見 東京服飾専門学校 ココカラメンタルクリニック鶴見
製作:ステューディオスリー 配給:太秦 ©ステューディオスリー
2024年/日本/DCP/5.1ch/105分 
公式サイト:hoshiyori-shizukani.com