阪神のホームゲームは立ち応援は事実上禁止

他球場の状況を見ると、同じセリーグの場合、巨人、中日、DeNAはヤクルトと同じく「外野席はそれぞれのチームの攻撃時には立って応援をするお客様が多数いらっしゃいますので、ご了承ください」といった趣旨のことが公式サイト上で説明されており、パリーグ6球団もすべての外野席というわけではないが、おおむね同様(エスコンフィールドHOKKAIDOは内野3・4階のホーム応援エリア)だ。一方、広島は内野2階席のパフォーマンスシートの座席の説明で「立ったり、座ったり、熱い応援を楽しめるコンパクトで動きやすいシートです」との記述があった。

さらに、阪神は少し特殊だ。古参の30代男性・阪神ファンがこう説明する。

「甲子園や京セラドームの阪神主催試合はルール上、立ち応援は禁止されているわけではありません。ただし、『立ち上がっての応援はまわりのお客様のご迷惑となる可能性があるので十分ご配慮の上、ご観戦ください』と場内アナウンスがされており、外野席であろうと現在では事実上、立ち応援はできない状態です」

立つのが当たり前の外野において、阪神のこの応援に関する運用は12球団で唯一だ。

「外野席で年間シートを購入している高齢者層が多いからとか、2003年と2005年の優勝後に急増したにわかファンが“立ち応援”に対してクレームを入れることが多かったため、とも言われていますが、詳しいことは定かではありません」(前出、阪神ファン)

阪神タイガースの本拠地、阪神甲子園球場
阪神タイガースの本拠地、阪神甲子園球場

しかし、立ち応援したい阪神ファンももちろんいる。

「去年、クライマックスシリーズのファーストステージが甲子園で開催されたのですが、もはやファイナル進出が絶望的になった第2戦の9回裏、ヤケクソになった阪神応援団が外野席のファンに立ち応援をするように音頭を取って、それがすごい迫力だったんです。

それで阪神ファンも『やっぱり立ち応援は楽しい』と思い出したのか、今は“立ち応援ができる席”をつくってほしいとの声が日に日に大きくなっています」(同)

今年から試合中に撮影した球場内の写真や動画のSNSへのアップロードについて制限がもうけられた。神宮球場を始め、立ち応援についてもこうしたトラブルが増えるとルール化されて禁止されてしまう可能性もある。

とはいえ、球場にはライト層からコア層までさまざまな観客が足を運ぶ。みんなが楽しめる空間づくりは、球団は積極的に行っていくべきだろう。

取材・文/集英社オンライン編集部