「学校のセキュリティー強化対策は学校への負担を大きくするだけ」

確かに、これまでの学校で行われてきた防犯教育は、無差別殺傷事件のような悲劇が2度と起きないようにと、保護者とは全く関係のない不審者が侵入してきた際の訓練が主体だった。

2023年3月に埼玉県の市立中学で起きた17歳の少年が校内に侵入し男性教員を刺傷させた事件も記憶に新しい。この学区の隣の小学校で勤務する女性教員のBさん(30代)は、「防犯訓練は年に1回、警察署と共同で行なっています」と言う。いったいどのような訓練を行なっているのか。

「蕨署の警察官の方が不審者役となり、不審者が学校に侵入し想定の経路で教室に向かってくるという設定で、教師らが実際に授業中に児童を引率するという訓練です。その際にはサスマタやネットランチャー、カラーボールなどを使い、捕獲するまでを訓練します。

教師全員が防犯器具を使いこなせるように学ぶのです。そして終わった後は校長先生が2001年に大阪教育大学附属池田小学校で起きた無差別殺人事件や隣の学区の中学校の事件を引き合いに、先生の言うことを聞きつつ自分の命を自分でも守ること、ということを児童に話しています」

立川市立第三小学校(撮影/集英社オンライン)
立川市立第三小学校(撮影/集英社オンライン)
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事件があった立川市立第三小学校の関係者は、「保護者の知人が酒ビンを持って暴れることは想定していなかった」と事件当時に語っていた。

学校や保護者、子どもたちはどのようにして命を守るべきなのか。この事件に「こんなの防ぎようがないでしょう」と強く言うのは教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏だ。

「男2人が侵入した経緯を知って言葉を失いました。これは究極のモンスターペアレントといっても過言ではない事件だと思います。これはたまたま学校で起きたことで、どこで起きても防ぎようがない、常識では考えられない凶行です。学校の責任を問うとすれば、難しい保護者への対応は適切だったかという点くらい」

では、どうすれば良いか。

「思いつくのは防犯訓練の強化くらいです。いろいろなケースを想定して危険回避行動のシミュレーションを行い、先生も児童もできるだけパニックに陥らないようにしておくことは、子どもたちのその後の人生においても決して無駄にはならないと思います」

性善説では命は守れない。子どもも大人もしっかりと訓練をし、万が一の事態に備える必要がある。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班