医療人と元東大タレントの間で

――グローバルヘルスを考えるうえで重要な世界的機構としては、WHOが思い浮かびますよね。将来、そういった場所での活躍も視野に入れているのでしょうか。

将来的なことはまだはっきりと決めていませんが、日本人がWHOで働くためにどうすればよいかを調べて、大学院生がWHOに派遣される道があることを知りました。スイスの大学院へ進学することを選んだのは、そうした選択肢を残すためでもあります。

また、帰国後は公衆衛生学で博士号を取って、臨床を行ないながら研究もできる医療人を目指したいと思っています。

同じく医療人である母の影響も大きく受けているという
同じく医療人である母の影響も大きく受けているという
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―― 一方で河野さんはクイズ番組『東大王』に出演するなどタレントとしての顔もお持ちです。メディアに近しい人間として、自身の関心事である医療政策との関連で考えていることはありますか。

国民が自身の健康について考える指針のひとつとして、メディアの発信は依然として重要であり続けると私は考えています。

メディアが発信する内容によっては、本当は健康にとって必要だったものが敬遠されることもありますし、その反対に健康を害するものが促進されるなど、健康そのものや、場合によっては寿命を左右することさえありえます。

また、バラエティ番組などで「エビデンスがある」として紹介される論文のなかに、実はエビデンスレベルがそこまで高くないものも存在します。

バラエティ番組がまるっきり嘘を放送することはないと思いますが、番組を面白くするためにキャッチーな論文を選択している可能性は否定できません。

エビデンスレベルまで深くチェックをせずに発信していても、通常、視聴者はそれを検証できませんよね。それはやや危険な側面があるのではないかと思うんです。

もしも私が『東大王』などでみなさんに顔を知ってもらえていて、医療に携わる者として多少の発信力があるのだとしたら、健康に関する確かな情報を発信するアイコンとして認識してもらえたら、うれしいですね。

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取材・文/黒島暁生 撮影/野﨑慧嗣