一度は子どもを連れて日本に逃げ帰ったが…「ハーグ条約」の壁
そのDはインターネット関連の仕事で稼ぎを得ていたが、2020年に新型コロナウイルス禍が起きる直前に仕事が減り「もう生活費を渡せない」と言い出した。そのためA子さんが両親から援助を受けるようになり、このころからDVもひどくなったという。
「何度も首を絞められ、授乳中にも絞められたと言っていました。それだけじゃありません。ガンマニアのDからは銃を頭に突きつけられたこともあったんです。これでA子さんは警察に相談し、Dは1日か2日、身柄を拘束されています」(Bさん)
この直後にA子さんは第2子を連れて日本へ逃げ帰っている。だがその逃避行も8ヶ月で終わり、ブダペストへ戻ったという。
理由は、一方の親による国外への子の連れ去りに絡む紛争の解決を定めた「ハーグ条約」に基づき、日本外務省がDの申し立てを受け入れ第2子をDの元へ戻すことを決めたためだ。
「お子さんと二度と会えなくなると思ったA子さんはブダペストに戻るしかなかったんです。帰るとDは中国籍の女性と付き合っており、離婚を求めてきました。A子さんは離婚後に自分や子どもはどうなるのか、制度や必要な手続きを知りたくて大使館に相談をしました。ところが結果を聞くと『だめだった。(相談先は)大使館じゃなかった』と返ってきました」(Bさん)
この相談について大使館は取材に「2022年6月くらいに当館は(女性から)元配偶者との関係について相談を受けました。『もしDVがあるような場合には警察に相談するのがいい』と説明したと(記録では)なっています」と答えている。