強硬な親ロシア派政権を止めるためには…
ジョージアに移住したロシア人は、今の状況をどう見ているのだろうか。
トビリシ在住のロシア人男性に話を聞こうとしたが、「話す気にはなれない」と断られた。同部屋に住むベラルーシ国籍の女性が男性の心情を代弁してくれた。
「私たちを受け入れてくれていることに感謝しています。でも、もし抗議が続いて反ロシア的な政権が誕生すれば、私たちは国外退去させられるかもしれません。それでも、ジョージアは私の故郷のようになってほしくありません」
彼女はロシアのウクライナ侵攻に協力するベラルーシでの暮らしに、罪の意識に耐えられず、昨年ベラルーシの首都ミンスクを離れ、ジョージアに移住してきた。彼女のような政治的移民は、ウクライナ、ロシア、そしてジョージアの間で揺れ動かされている。
一方で、抗議集会やデモに参加するロシア人もいる。地元メディアは、昨年末の激しいデモで逮捕された約450人のうち、少なくとも11人が外国籍であり、そのうち8人はロシア人だったとNGO(国際非政府組織)の発表を引用して伝えている。
今年初めに行なわれた集会の中では、ウクライナ国旗を掲げる人々の姿も目立つ。新大統領就任の抗議のためにウクライナのポルタバから駆けつけたというアナスタシアさんは逞しい口調で言う。
「ロシア、そしてプーチン政権に抵抗するためには、国籍を超えた連帯が必要なのです」
とはいえ、ジョージア市民が直面する現実は厳しい。選挙には不正が絡み、抵抗が激化すれば多くの逮捕者が出る。先行きの見えない不安定な状況は続く。「具体的な戦略を描くことはできない。ただ集まって声を上げ続けるしかない」と集会に参加するレヴァンさんは訴える。
彼らのようなデモ参加者が掲げるプラカードの多くは英語で書かれている。
国外へのアピールのためだ。昨年末、バイデン政権は与党創設者イワニシビリ元首相を制裁対象にすると発表。この発表後に大統領に就任したトランプ氏への期待を語る声も聞かれる。
ロシアによるウクライナ侵攻がもたらした影響は計り知れない。現在もジョージアでは反政府デモが続くなか、野党指導者やジャーナリストが襲撃されるなど不審な事件も起きている。EUや米国がすべてを解決するわけではないにせよ、多くの市民が声を上げ続けている今こそ、ジョージアが引き返すべきときではないだろうか。
取材・撮影・文/児玉浩宜