自分の回復だけを考える

自身も辛い経験をした小島さん。

「アルコール依存の父親と、その父親から暴力を受けていた母親の姿が、私の頭の中に焼き付いていて。母も私を頼りきっていた。私と母は特別な関係でした。お酒を飲んでいても、母が何とかしてくれると思い込んでいました。ところが『あなたも30歳になったんだし、自分で全部考えてやりなさい』と突き放されて。でもそれが、自ら支援施設を訪れるきっかけになりました。それまで私は意志が弱い、バカな人間だからお酒が止められないと思っていたんです。でも、アルコール依存症という病気であること。お酒さえ止めればどんどんよくなっていくことを施設のスタッフや専門家に教えられて。人生を変える筋道が見えてきた」

すがれるもの、頼れるものがあると、そこに逃げ込んでしまう。放り出されるように一人になって、自分の意思で支援の施設とつながったとき、自分と同じようなつらい体験をした人がいることを知り、断酒を続けている仲間との出会いがあった。

「仲間がお酒を止めようと頑張っている。私だってやれる。徐々にそんな思いが私の中で育っていったんです」と、小嶋さん自身のケースを語った。

アルコール依存症の女性には、家族が大きな影響を与えている場合が多い。自分が守りたい家族、また自分が頼れる家族が、女性にとって断酒への大きな壁として立ちはだかったとき、どうしたらいいのか。

「家は回復できる場所ではない」女性アルコール依存症患者にとって、頼りたい家族が断酒の「大きな壁」となる日本特有の事情_3

「自分の回復だけを考えるのです。支援施設には宿泊施設が整ったグループホームがあります。その施設に一定の期間入所する。家庭があるなら、まずご主人に相談することです。お酒を止めたいからしばらく施設に入ると、自分の気持ちをじっくりと説明し、子どもを実家や施設に一定期間預けることも考える」

実はこの行動の中に、アルコール依存症からの脱却の大きなヒントが隠されていると、小嶋さんは感じている。